復活への確かな手応えを感じ取ったのだろう。フリーの演技を滑りを終えたエフゲニア・メドベージェワ(ロシア)が、久々にリンクの上で笑っていた。
ロシア代表3人目にメドベ フィギュア世界選手権
今年2月にモスクワの北西約500キロ、ベリーキーノブゴロドで開かれたフィギュアスケートの「ロシア・カップ・ファイナル」。ショートプログラム(SP)で首位に立つと、フリーは2位。合計222・90点で、優勝をさらった。
決して完璧な演技ではなかった。フリーでは、序盤のサルコウ―ループの連続3回転ジャンプで転倒する痛恨のミス。ただ、そのまま崩れなかったところに、メドベージェワの手応えが詰まっている。
「最も大事なのは(4位に終わった昨年11月の)フランス杯の時とは違って、失敗しても慌てなかったこと。滑り切れて、とてもうれしい」。国際オリンピック委員会(IOC)が立ち上げたサイト「五輪チャンネル」が、壁を乗り越えた19歳の素直な喜びを報じている。
コーチ・拠点を変える決断
今季を迎える前、メドベージェワは大きな決断に踏み切った。昨年5月、11年間指導を受けてきたロシアの名コーチ、エテリ・トゥトベリゼ氏の元を離れ、カナダ・トロントを拠点に羽生結弦(ANA)らを指導するブライアン・オーサー氏に師事することを発表したのだ。
「新しい可能性や異なる指導法を活用するため」。それが、移籍の理由とされる。2017年11月に右足甲の骨折が判明。優勝候補筆頭として臨んだはずの昨年2月の平昌(ピョンチャン)五輪では銀メダルに終わり、翌月の世界選手権は右足痛で棄権。環境を変えることで負の連鎖を止めようとしたとしても、無理はない。
15年にシニアデビューを果たし、グランプリ(GP)シリーズ優勝は計5度。他にも世界選手権とGPファイナルで、それぞれ2度ずつ優勝を飾っている。残してきた実績は現役選手トップと言ってもいい。だが、かつての女王は今季、これまでにない不振に苦しんだ。
昨年10月にあったGPシリーズ初戦のスケートカナダは総合3位。GPシリーズで優勝を逃したのは3季ぶりで、銅メダルは過去最低の成績だった。さらに、11月のフランス杯ではSP3位、フリー5位で総合4位に沈み、GPファイナル出場も逃してしまった。
波乱は続く。12月のロシア選手権ではSP14位と大きく出遅れ、フリーは4位と巻き返したものの総合7位。14歳のアンナ・シェルバコワら、恩師トゥトベリゼ氏が指導するジュニア勢の表彰台独占を許し、欧州選手権への出場もかなわなかった。
「愛国的でない」 思わぬバッシング
カナダに拠点を移して1季目。…