フィギュアスケート女子で20年以上前に4回転ジャンプに挑戦した選手がいる。フランス出身のスルヤ・ボナリー(45)だ。白人が多いフィギュア界で、数少ないアフリカ系選手として活躍した。16歳の紀平梨花(関大ク)が来季に挑戦を示唆するなど本格的な女子4回転時代突入を前に、先駆者の思いを聞いた。
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周囲は「クレージーだ」
2月下旬、米ミネソタ州ミネアポリス郊外のスケートリンクに、その姿はあった。指導者として選手の個別指導に明け暮れていた。4回転ジャンプについて聞くと、いまの選手をうらやましそうに語り始めた。
「自分がパイオニアのような気持ちがして面白い。1990年に私が初めて挑戦した時、周囲は『クレージーだ』と言った。『なぜ、女子で4回転なんか跳んでいるの』って。練習してきた努力も、4回転の真価も認めてくれなかった。女子選手が4回転を跳んだら祝福すべきなのに」
73年にフランスで生まれ、孤児院に入った。「両親が私を置いていった」という。1歳になる前に養子に。養母は体育教師だった。「仕事場によく行った。水泳や陸上も教わったけど、2歳くらいの時、そこでスケートを始めた」。高い身体能力を生かし、89~97年にフランス選手権を9連覇、91~95年に欧州選手権を5連覇した。女子選手としては前人未到の4回転ジャンプにも挑んだ。
ただ、世界の頂点に立つことは…