スマートフォンを使って簡単に注文できる飲食店の宅配代行サービスが広がっている。自宅や職場で手軽に食事を済ませたい「時短」ニーズの広がりに加え、この秋から宅配の「お得感」も増すことから、外食各社が力を入れている。
3月下旬の日曜日の昼時、スマホで出前館のサイトを開き、家から徒歩15分の距離にある「カレーハウスCoCo壱番屋」に注文をしてみた。待つこと30分弱、寒空のもと、ほかほかのカレーを玄関先まで届けてくれた。ビーフカツカレーは店舗だと税込み865円だが、配達料400円と追加料103円がかかった。
宅配ポータルサイト「出前館」は配達拠点が100カ所を超え、個人経営の飲食店も含め加盟する飲食店は1万8千店にのぼる。出前館は新聞販売所にも宅配を依頼しているが、宅配需要の高まりを受けて直営の配達拠点を増やす方針だ。
宅配代行を頼む場合、飲食店は売り上げの数十%の手数料を出前館側に支払うが、牛丼の「吉野家」やギョーザチェーンの「大阪王将」など続々と大手外食チェーンが参加している。出前館を運営する夢の街創造委員会の中村利江社長は「人々のライフスタイルが変化してニーズが高まっている。飲食店からの(加盟についての)問い合わせが最近多い」と話す。
人手不足に悩む飲食店側としては、宅配代行に頼ることで、宅配員を確保したり、電話注文を処理したりする手間が省けるというメリットがある。
緑色の宅配バッグでおなじみの米ウーバー・テクノロジーズの宅配代行サービス「ウーバーイーツ」は、加盟する飲食店が9都道府県で6700店以上という。2月からゼンショーホールディングス(HD)の「すき家」「なか卯」が加わるなど、加盟企業が増えている。
外食チェーンが自前で宅配を強化する動きもある。ファミレス大手のすかいらーくHDは「ガスト」「バーミヤン」など約3200店のうち、約1千店は自前で宅配もしているが、ウーバーイーツも400店で導入する。
調査会社の「エヌピーディー・ジャパン」によると、2018年の出前の市場規模は前年比5・9%増の4084億円だった。フードサービスシニアアナリストの東さやかさんは「成長の背景には、もともと宅配の需要が高まっていたところに供給の選択肢が増えたことがある」と指摘する。
今年10月の消費増税に合わせて、飲食料品に8%の軽減税率が適用されると、出前サービスの利用が一段と伸びる可能性がある。店内で飲食した場合、消費税は10%なのに対し、テイクアウトや宅配の税率は8%に据え置かれるからだ。「軽減税率の導入をきっかけに宅配はさらに注目される」(すかいらーくHD)との見方が広がる。(長橋亮文)