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元女子高の啓新、創部7年目でみせた粘り 校長「誇り」

第91回選抜高校野球大会で、春夏通じて甲子園初出場の啓新(福井)は30日、智弁和歌山(和歌山)に挑んだ。応援席では初戦に続き、父の代からの悲願をかなえた校長が声を張り上げた。


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「アゲアゲホイホイ」。九回、1点を返してなお続く好機に、一塁側アルプス席でジャンパー姿の荻原昭人校長(52)が生徒らと一緒に歌って踊って逆転を信じた。最後の打者が二ゴロに打ち取られた後、メガホンをたたいて選手をたたえた。「諦めない気持ちが表れていました」


啓新は、福井精華女子学園を母体として創設された元女子高。1998年に共学化された。当時の校長は荻原校長の父で、熱狂的な阪神タイガースファンだった故・芳昭さん。2人はその頃から「野球部ができて、甲子園に行けたらいいね」と夢として話していた。


野球部創部は、2009年に芳昭さんが亡くなった後の12年だった。指導者を探すのが難しかった。新人では選手は集まらず、実績ある指導者はすでに他校の監督に就いている。10年に知人の紹介で、東海大甲府(山梨)を春夏通算11回甲子園に導いた大八木治・前監督と出会ったことをきっかけに、学園創立85周年、開校50周年、共学化15年目の節目のタイミングでの創部がかなった。


練習場所を探すのにも苦労した。学校のある福井市街の周辺で広い敷地を確保できず、専用グラウンドが完成したのは14年のこと。学校からバスで約30分の福井県坂井市にある空き地を買い取り、整備した。


大会出場が決まった後、荻原校長は父の仏壇に手を合わせて報告した。「聖地で思い切りプレーする姿を見守っていてください」。主将の穴水芳喜君(3年)には「気を引き締めてやれよ。学校が支えているから」と声をかけた。穴水君は責任を感じ、さらにメンバーへの声かけなどに力が入ったという。


13日には、甲子園に向けて出発する部員たちを前に、両手を高く突き上げてエールを送った。「フレー!フレー!啓新!」。その後はバスに乗り込む部員一人一人と握手し、「楽しんでこいよ」「挑戦してこい」と声をかけた。今まで甲子園にかけてきた先輩たちの思いを忘れず、どこのチームよりも思い切ったプレーをしてほしい。そんな思いを込めた。


27日には昨秋の関東大会で優勝した桐蔭学園(神奈川)を破って甲子園初勝利を手にし、この日も強豪の智弁和歌山に粘りを見せた。荻原校長は「誇りです。この経験がいつか財産になると思う」と話した。芳昭さんには「選手はよく頑張ってくれた。天から見守ってくれてありがとう」と報告するつもりだ。穴水君は「甲子園で野球をやれたのは部をつくってくれた校長のおかげ。夏は一緒に戻ってきたい」。(平野尚紀、角詠之)


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