紙の教科書の内容をタブレット端末などに取り込んだ、児童生徒用の「デジタル教科書」が4月から、全国の学校の授業で使えるようになる。積極的な学びにつながる効果があるとされ、障害がある子どもの学習支援にも有効なため、先進的に使っている学校からは評価する声が上がる。ただ、端末などの整備状況は自治体によって異なり、普及には課題が残る。(円山史、宮坂麻子)
発言苦手でも意見共有しやすく
「音読してみよう」
3月中旬、埼玉県の戸田市立戸田東小学校の4年の国語の授業で高橋健太教諭(24)が呼びかけると、児童たちは机の上にタブレット端末を出し、デジタル教科書の文章を読み始めた。漢字にルビが付く「ルビ機能」で読む子や、文字の大きさを変える子もいる。「読みやすい方法でいい、といつも言っています」と高橋教諭は言う。
同校は教科書出版大手の光村図書出版と協力し、2018年度から研究校として国語の授業でデジタル教科書を使っている。この日行った、物語の主人公の心情変化を読み取る学習ではマーカー機能を使った。変化の根拠となる場面の様子は「赤」、主人公の様子は「青」で印をつけ、タブレットにインストールされているソフトを使ってまとめた児童たちは、周囲に結果を見せた。最後は何人かの画面を、教室の電子黒板に映し出して議論をした。
デジタル教科書の効果について高橋教諭は「子ども同士が話し合う時間も多く取れ、授業が充実します」と語る。手を挙げて発言することが苦手な子どもが、自分の意見を周囲と共有しやすくなるなどの効果もあるという。児童たちは「簡単に何度も直せる」「作業に時間がかからない」「自分の書いたものが保存でき、すぐに出せるからいい」と話す。
課題は環境整備だ。デジタル教科書を使うためには「クラスで1人1台の端末」の条件をクリアしなければならないが、無償給与される紙の教科書と異なり、端末購入には自治体の予算が必要になる。戸田市は18年度から全小学校に3クラス当たり1クラス分の端末を導入したが、1人1台はないため、クラス同士で共有しなければならず、使える授業が限られる。
文部科学省の調査では、埼玉県は18年3月現在、教育用コンピューター1台あたりの児童生徒数が7・9人で、全国で最も多かった。県教委は県立高校にタブレット端末の配備を進めているが、小中学校は市町村の判断になる。県教委義務教育指導課は「問題意識は持っているし、埼玉の子も文房具のようにICT(情報通信技術)を活用できる子に育てたい。市町村にお願いするしかない」と語る。
■普及トップは佐賀、導入…