交通事故の危険性を実感してもらおうと、愛知県警はVR(仮想現実)を活用した「交通安全シミュレーター」を導入した。愛知県は昨年まで15年連続で、交通死亡事故件数が全国ワーストで、高齢者の割合も高い。県警は高齢者を中心に道路に潜む危険を体験してもらい、事故の防止につなげる狙いだ。
VRシミュレーターは、小型モニターを内蔵したゴーグル型の端末で、頭部にベルトで固定して使用する。目の前の映像は頭の動きに連動し、ドライバーや自転車、歩行者の視点で事故を体験できるようになっている。県警は民間企業と協力して、VRで使用する映像を作製した。
県内の交通事故死者は167人(11月18日現在)で、今年も全国最多だ。そのうち91人が高齢者で半数以上を占める。自転車に乗った高齢者が巻き込まれる事故が目立つといい、自転車利用中の死者33人の8割ほどが高齢者だった。一時停止を無視するといった、自転車側の違反が原因とみられるケースもあるという。
VRシミュレーターの映像は、自転車を利用する高齢者を意識した内容に仕上げた。スタントマンらが、360度撮影できる特殊カメラを装着し、車や自転車に乗って事故を再現して撮影。交差点を横断中の自転車が右折してきた車にひかれる場面や、見通しの悪い十字路で出合い頭に衝突する場面など、4種類の「リアルな事故現場」を体験できる。
これまでのシミュレーターに比べ、利便性も増した。運搬や設置に手間がかかる上、1回につき1人しか体験できなかった従来型に比べ、VRは手軽に持ち運べ、多くの人が同時に利用することができる。県警は今後、県内の大型商業施設などで開催する交通安全イベントで、VRと従来型のシミュレーターを併用しながら、交通事故の抑止に取り組むという。
■記者も体験し…