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会社を辞めたいけど、辞めると言い出せない。そんな悩みに応えようと、本人の代わりに退職に関する連絡をする「退職代行」のサービスがあるという。
《詳細版》「辞めます」が言えなくて 退職代行、頼む人たちの事情
【特集】SNSで声集め、深掘り取材…#ニュース4U
「代行使う人ホントにいるんだー」「辞める事も言えないってどういうことよ」。SNS上には疑問の声もある。退職代行サービスを手がける「EXIT(イグジット)」(東京)で、ともに代表取締役を務める新野(にいの)俊幸さん(29)と岡崎雄一郎さん(29)に話を聞いた。
利用者はまず、LINEやメールで勤務先や退職したいことを伝えるべき担当者名などを送る。利用者が正社員なら5万円、パート・アルバイトなら3万円の費用を振り込むと、同社が退職に関する連絡を代行する。2017年8月に本格的にサービスを開始。これまで2千件の依頼を受けたという。
同僚退社、社内は騒然「怖くて…」
依頼をした大阪市の男性(28)は、4カ月勤めた中古車買い取り会社を昨年9月に退職した。客の家を訪問して車を査定し、価格交渉をするのが仕事だった。男性によると、上司が示す価格設定は厳しく、客に頭を下げ続けた。説得できないと、「御用聞きじゃねんだよ」と上司に責められた。営業成績が落ちると、「こんなに使えないとは思わなかった」と言われたという。自信を失い、追い詰められて飲酒量が増えた。
同僚が急に退職したとき、「あいつのせいで休みがなくなった」と社内は騒然。もし自分が辞めたいと言ったら――。怖くて想像できなかった。
ある日、友人の弁当屋を手伝った。客が「おいしかったよ」と笑顔で言ってくれた。「人に感謝される仕事がしたい」と思った。翌日、退職代行を依頼した。
弁護士に退職代行を頼んだ北陸地方の40代の女性にも聞いた。訪問看護の会社を昨年10月に辞めた。女性によると、事務所では10人ほどのスタッフが常に誰かの悪口を言い、女性も陰口を言われたり無視されたりするように。訪問先の利用者をも悪く言うのが聞こえ、怒りがこみ上げた。パソコンで「退職 手続き」と検索し、退職代行を知った。相談できる人がいなかったという点が、当事者2人には共通していた。
弁護士への相談も続々
東京弁護士会の小澤亜季子弁護士は昨年8月、退職代行の相談を受け始め、ホームページを立ち上げた。月20件ほど依頼を受ける。「退職届を出しても受理してもらえなかったり、『後任が見つからない』と言われて責任を感じたり。心身の調子を崩し、退職後にようやく眠れるようになったという人もいる」
大阪と京都に事務所を構える古川拓弁護士と片田真志弁護士も相談を受けている。古川弁護士は過労死やブラック企業対策に取り組んできた。「ニーズはあると思っていたが、反響は想像以上。責任感は大事だが、命より大切な仕事はない」。片田弁護士は「退職代行はいずれなくなるのが健全な社会だ」と話す。
踏み込んだ交渉、「非弁行為」注意
退職代行へのニーズはある一方で、弁護士以外の業者による代行は、弁護士法が禁じる「非弁行為」にあたるとの指摘もある。深澤諭史弁護士(第二東京弁護士会)は「依頼者が伝えてほしいと言った定型的な言葉を伝えるだけなら非弁行為にあたらない可能性が高い。だが、それ以上の対応や助言業務をすると、非弁行為にあたり、依頼者が法的責任を問われる可能性もある」と指摘する。
EXITは「交渉など、非弁行為にあたることはしていない。線引きにあいまいなところがある点は認識しており、顧問弁護士に相談して業務範囲を適正にしている」と説明している。(沢木香織)
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