解説
アインシュタインの一般相対性理論からブラックホールの存在が予言された約100年前、天文学者はその存在を信じなかった。それが、今回初めて直接的に証明された。数々の仮説や推論によって手探りで組み立てられてきた姿は、今後じかに見ることで素性や成り立ちが明らかになる。
ブラックホールは「破壊と創造の主」だ。あらゆる物質をのみ込んで消し去る一方、銀河の中心でガスや星を引きつけ、銀河の成長に影響を与える。宇宙の中で進化のカギを握る。
一度入れば二度と出て来られない「あの世」との境は「事象の地平線」(イベント・ホライズン)と呼ばれる。世界中の研究者が光さえ吸い込む現象の撮影を目指してきた。1970年代以降、その存在を示す証拠が集まり始めたが、いずれも間接的なものだった。各地の望遠鏡をつなぐ国際協力が進み、多くの信号を集めて合成する技術や理論の発展が、今回の成果に結びついた。
大須賀健・筑波大教授(理論宇宙物理学)は「今世紀最大のニュースの一つで、ノーベル賞級の業績だ。ブラックホール研究の新しい時代が始まる」と語る。(石倉徹也)