インドネシアの大統領選が17日に投開票される。現職ジョコ・ウィドド大統領(57)と、前回選挙で惜敗した元軍人のプラボウォ・スビアント候補(67)による一騎打ちだ。かつての独裁が終わって約21年が過ぎ、東南アジアの「優等生」と評価される民主化には課題も見えてきた。再選が有力視されるジョコ氏が1期目で掲げた7%の経済成長は、足踏み状態が続く。約1・9億人の有権者はどんな選択をするのか。(ジャカルタ=野上英文、マウメレ=守真弓)
白シャツを腕まくりしてひざをつき、ジョコ氏が職人の声を聞いていた。5日、西ジャワ州チレボンの地場産業であるラタン(籐(とう))工房。選挙演説後の現場視察だ。原材料が不足しがちという悩みを聞き出すと、「いつでも入手できるよう、国営倉庫を作りたい」とその場で対策を打ち出してみせた。
見物に来た作業員スマントリさん(40)は「市民目線で国を発展させるリーダーだ」と声を弾ませた。
現地語で「ブルスカン」と呼ばれるアポなし視察をして、市民から直接聞き出した社会問題を解決策につなげていく手法は、ジョコ氏の代名詞とも言える民主政治の実践法。地方の貧しい家庭に生まれたジョコ氏は、ブルスカンを武器に地方の市長として人気を集め、首都ジャカルタの州知事を経て、2014年に国政の頂点に上り詰めた。
いまや地方の首長職は大統領選の登竜門。ジョコ氏を手本に、新しい政治リーダーが地方で次々と育っている。この日、ジョコ氏に同行したリドワン・カミル西ジャワ州知事(47)もその一人だ。建築家から政界に転じ、昨年6月の同知事選で当選。朝日新聞の取材に、ジョコ氏を「手の届くリーダー。後に続きたい」と称賛し、24年大統領選への意欲も隠さなかった。
■庶民性と強…