東京電力福島第一原発が立地し、今月10日に一部地域で避難指示が解除された福島県大熊町で14日、新しい町役場の開庁式があった。新庁舎近くでは、店舗や商業施設のほか、災害公営住宅50戸の建設も進む。5月7日から8年ぶりに町内で業務を再開する。
新庁舎は原発立地自治体として初めて避難指示が解除された同町大川原地区に建設された。工事費は約27億4千万円。敷地面積約1万8千平方メートル、延べ床面積は約5500平方メートル。
この日の開庁式には、安倍晋三首相らが出席。安倍首相は「大熊町では避難が長く続いたが、古里に帰りたいとの情熱を持ち続け、復興に取り組んできた。その熱い思いが実を結び、町役場が町内に戻ってきた。本格的な復興に向けた第一歩だ」と述べた。
大熊町は、原発事故で約1万1500人(当時)の全町民が町外への避難を強いられ、町役場は100キロほど離れた同県会津若松市に仮庁舎を設置して業務を続けていた。避難先の同市に残る町民もいるため、町役場の機能は一部残すが、町長ら幹部を始め、主たる機能は新庁舎に移る。
大熊町の渡辺利綱町長は式典で、「ただいま帰りました! 古里の大熊町の空に、風に、大地に、ようやくこの言葉を言える日が来ました」とあいさつし、会場から拍手があがった。
町では今月10日、町面積の約4割にあたる大川原、中屋敷両地区で避難指示が解除された。3月末現在、町民の約4%、138世帯367人が住民登録しているが、町は今後、帰還住民約500人に、東電社員ら新住民約900人を加えるなどの青写真を描く。
町中心部で帰還困難区域のJR大野駅を含む地域では、特定復興再生拠点として集中的に除染・整備する事業が進められており、町は2022年春までの避難指示解除を目指している。
大熊町役場が町内に戻ったことで、現在も町外に町役場が避難しているのは、いわき市に拠点を置く双葉町のみとなった。(三浦英之)