8時間を超える火災で尖塔(せんとう)や屋根が焼失したパリのノートルダム大聖堂は、火災から1週間経ち、内部の文化財の様子が明らかになってきた。マクロン仏大統領は5年で再建すると宣言したが、道のりは険しい。(ランス=疋田多揚)
【写真】ノートルダム大聖堂の尖塔(せんとう)部分が炎と煙にのみ込まれながら崩れ落ちる瞬間をとらえた
大聖堂では一帯を封鎖し、壁の補強やがれきの撤去といった作業が進んでいる。19日には、内部にあった絵画のうち15点がルーブル美術館へ運び出された。リステール文化相によると、炎にさらされておらず、大半は無事とみられる。
ただ、見た目に大きな被害がない場合でも、7千本以上のパイプを持つパイプオルガンなど、熱や放水で傷んだ可能性を仏メディアは指摘している。建物についても、石灰岩や、接合部分に使われた石灰は熱や水に弱いため、強度の鑑定は簡単ではない。
フィリップ首相は17日、焼け落ちた尖塔の新たな設計で国際コンペを開くと表明した。必ずしも元の形にこだわる必要はないという。以来、「大聖堂をどう復元すべきか」をめぐって議論が起きている。パリジャン紙は18日の特集で「あまりに長い歴史を持った建物に変更を加えるべきではない」「大聖堂は修復を繰り返すもので、それも歴史の一部だ」とする専門家の両論を紹介した。
屋根組みに再び1300本分の木材を使えば、材料の調達や乾燥に時間がかかる一方、チタンなどの軽い素材なら再建が早く進むメリットがあるという。
■先例では当時の最先端技術…