日立製作所が主要子会社の化学大手、日立化成の売却に向けた手続きに入った。日立化成は電池の材料などで世界有数のシェアを持ち、かつては日立グループの「御三家」の一つに数えられたが、国内全7事業所で品質データの不正が昨年発覚。25日には新たに子会社の不正も公表し、出荷先は258社増えて延べ2587社になった。日立製作所と日立化成がともに上場する「親子上場」も問題視されるなか、グループ再編の対象になった。
日立製作所は日立化成に約51%出資している。関係者によると、保有株のすべてか大半を手放す方向とみられ、買い手を入札で募るための手続きに着手した。売却額は数千億円になる可能性がある。大手メーカーや投資ファンドが関心を示すとみられている。
日立化成の丸山寿(ひさし)社長は25日の決算発表会見で「日立製作所の持ち株比率が変わるとのシミュレーションは昔から進めていた。そういう話があれば議論の場は持ちたい」と述べ、日立グループからの離脱を容認する姿勢を示した。「我々がめざすのは高機能材料で存在感を示す会社だ」と強調し、社会インフラやITサービスの事業に注力する日立製作所との戦略の違いも指摘した。
同日発表された日立化成の2019年3月期決算(国際会計基準)は、売上高が前年比1・8%増の6810億円、営業利益は21・3%減の363億円。稼ぐ力を示す売上高営業利益率は5・3%だった。10%以上をめざす日立製作所にとっては足かせになりかねない水準で、日立化成とのシナジー(相乗効果)も薄れている。
両社はともに東証1部に上場し、親子上場の状態にある。日立化成は上場会社として独立した管理体制を持つはずなのに、検査結果の偽装などの不正が全社的に広がっていた。企業統治の不備は明らかだ。日立グループのブランドを大きく毀損(きそん)し、日立製作所も親会社として不正を防げなかった責任を問われかねない状況だ。日立製作所幹部は「親子上場を放置していたら、経営者として怠慢だと指摘される」と話す。日立グループではほかに、日立建機など子会社3社が東証1部に上場している。(上地兼太郎、笹井継夫、内藤尚志)