丘一面をネモフィラが淡い青色に染める絶景が見られる国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)。大型連休前後に観光客が押し寄せるこの時期、人気を集めるメニューがある。「ネモフィラカレー」だ。真っ青なカレールーがかかっており、第一印象は正直、「まずそう」だったが……。
丸く盛られた白飯を覆ってかけられた青いルー。ネモフィラの色に近い明るめの青だ。公園の遊園地内にあるレストラン「ガーデンレストラン」で食べられ、税込み800円。
記者も注文したが「スライム」にしか見えず、一口目はためらった。遊園地や遊園地内のレストランなどを運営し、商品開発に携わった常陸サンライズパークの村井孝行さん(49)は「食べられず、食器返却口に戻す人もいます」。
口にしてみると、普通の甘口カレーだ。県産のローズポークにもしっかり味が染みている。近くで食べていた東海村の中学1年生、飯倉夢さん(12)は「見た目はすごいけど、味はカレーそのもの」と笑う。
レストランがこのカレーを売り出したのは2014年春。村井さんたちはしばらく前から、ネモフィラ人気にあやかった関連商品のアイデアを考えていた。
すぐ頭に浮かんだのが、一番人気だったカレーをネモフィラ色にすること。しかし、カレーを製造する食品会社に問い合わせると、いったんは「加熱すると緑になってしまう。青は難しい」。加熱のタイミングを試行錯誤し、半年かけてネモフィラに近い青色が出せるようになった。
「青色の食べ物」への懸念はあった。色彩と食欲の関係について詳しい山梨学院短期大の中川裕子教授によると「青色の食材はあまり存在しないので脳が違和感を示す」ため、食欲を減退させる。村井さんも青色が食欲を減退させることは気になったが、「なんと言ってもまずインパクトがある。発達してきたSNSで人気は出るはずだ」と勝負。予想は的中した。
インスタグラムやフェイスブックなどに写真をアップし、仲間と共有する際の「SNS映え」を狙う人たちが集まり、多い時で1日300食、売り上げの3分の1を占めるまでになった。ただ、ネモフィラが咲く時期を過ぎると一気に売れなくなるため、いまは期間限定で、5月下旬ごろまで販売している。
村井さんに作り方を聞いてみた…