倒壊の恐れや衛生上の問題がある空き家を自治体が撤去できる法律が施行されて4年。実績は100件余りにとどまっている。全国の空き家は総住宅数の1割強、850万戸近くあり、周囲に影響を及ぼすケースも出ているが、自治体の人手やノウハウ不足に加え、私有財産の強制的な取り壊しは容易ではない実情がある。
総務省は4月下旬、2018年の調査で、全国の空き家がアパートなどの空き室も含めて846万戸あり、総住宅数の13・6%を占めると発表した。いずれも過去最高で、少子高齢化に伴い、急増している。
自治体が強制撤去する際に根拠となる空き家対策特別措置法は15年2~5月、順次施行された。倒壊の恐れが高い、衛生上著しく有害――といった空き家を「特定空き家」に認定。撤去や修繕の助言・指導、勧告、命令ができ、従わなければ市区町村長が代執行して強制的に撤去できる。放置すると、衛生面や防犯、景観上の問題が生じる可能性があるほか、災害時に損壊して周囲に危険を及ぼす恐れがあるからだ。
国の調査によると、助言・指導に至ったのは15年度以降、計1万3084件。代執行に踏みきった事例は、計118件。15年度が9件、16年度が37件、17年度が52件、18年度(半年間)が20件だった。
ただ、代執行は所有者の理解や金銭的負担のほか、そもそも所有権が複雑だったり交渉相手が見つからなかったり、簡単には進まないのが現状だ。
国土交通省は代執行に至るまでの対策も重視し、17年10月には空き家の利活用を促進するため、空き家・空き地バンクを開設。現在約600自治体が参加し、延べ約9千件の情報を掲載している。自治体も撤去費の補助や、更地にしても税負担を軽減するといった施策を設け、所有者の自発的な対応を促している。
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