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下校のチャイムが鳴り、自転車に乗る生徒が校舎から次々と出ていく。頭には、白や濃紺のヘルメット。愛媛県では、高校生の通学時のヘルメット着用率は95%だ。何げない日常の風景。ただ、そこには大人たちの特別な思いが込められている。
ヘルメット着用、始まりには理由が
下校のチャイムが鳴り、生徒が校舎から次々と出てきた。駐輪場に並ぶ自転車のカゴには、白や濃紺のヘルメット。それを頭にかぶり、勢いよく走り出すのは、みんな高校生だ。全国でも珍しい光景だが、愛媛県では見慣れた日常となっている。
「皆さんは世の中にとって重要で素晴らしいことをしている。始まりには理由があることを忘れないで下さい」。県内の高校で2018年10月に行われた「命の授業」。講師の渡辺明弘さん(50)は生徒に呼びかけた。
14年冬、県立伊予農業高1年だった長男の大地さん(当時15)は、信号のない横断歩道を渡っていてトラックにはねられた。約20メートル飛ばされ、頭を強打して亡くなった。期末試験を終えて自転車で帰宅中だった。安全確認を怠ったとして、運転手は執行猶予付きの有罪判決を受けた。
事故の翌日は大地さんの母の誕生日だった。葬儀の数日後、部屋のクローゼットから折り紙の花束が見つかった。ピンク、緑、黄……。鮮やかな花びらの部分は、大地さんが朝早く学校に来て、和柄の折り紙を折りためていたと、友人から聞いた。茎の部分も手作りだった。
子どもたち、守れますか 学校の死角
どんな時にどんな事故が起きやすいのか、年代ごとに分かる特設ページで考えます。
「折り紙博士」。幼稚園の頃、そう呼ばれたほど、大地さんは、幼い頃から手先が器用だった。「誕生日はお花がいいな」とリクエストしていた母へのサプライズ。母は、胸に抱きしめて泣いた。
自転車で下校中、事故で亡くなった渡辺大地さん(2014年6月、父明弘さん提供)
大切に育ててきた15年間あっという間に…
大地さんは写真が趣味で、放課後はカメラを首から下げて出かけた。沈む夕日、こちらを見つめる猫……。日常風景を切り取るのを好んだ。
帰宅すると、今日を無事に終え…