パキスタンで国教のイスラム教を侮辱したとする冒瀆(ぼうとく)罪で一審で死刑判決を受け、8年収監された末に最高裁で無罪を言い渡された少数派のキリスト教徒の女性が、8日までに出国し、カナダに亡命した。支援団体が明らかにした。
亡命したアシア・ビビさんは昨年10月に無罪判決を受けて釈放された後も、急進的なイスラム教徒による殺害予告や不服申し立てで出国できずにいた。カナダには夫とともに到着。既に亡命している娘たちと再会する予定だという。
アシアさんは2009年、イスラム教徒の隣人に対して預言者を侮辱する発言をしたとして逮捕され、死刑判決を受けた。ただ、隣人の証言はあいまいで、少数派をおとしめるためのでっち上げだった可能性があるとして無罪になった。
冒瀆罪は死刑が適用される重罪で、乱用されることも多く、国際的な批判を浴びてきた。一方、冒瀆罪の見直しに言及した政治家が殺害されたり、厳罰を求める急進派が大規模デモを展開したりするため、見直しは難しいのが現状だ。
支援団体によると、同国で冒瀆罪に問われているキリスト教徒はアシアさんの他に少なくとも十数人いるという。(バンコク=乗京真知)