小・中学校の体育の授業で、特に重い事故が目立つのが跳び箱だ。実は、技の順番によって深刻なけがにつながることがあると、国は注意を呼びかけている。どんな順番が危険なのか。
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【特集】子どもたち、守れますか 学校の死角
「跳び箱事故なくそう」8月シンポジウム 指導法を解説
「足も指も動かない。跳び箱でこんなことになるなんて」。2017年5月、横浜市立中学校の体育の授業で、中学2年だった男子生徒(15)は5段の跳び箱を跳ぼうと強く踏み切り、バランスを失った。手をついたが、頭から落ちて首を損傷。病院に搬送された。
頸椎(けいつい)の脱臼骨折で胸から下が自由に動かせなくなり、手術と1年以上の入院を経た今もリハビリに通う。ロボットが作りたくて志望していた工業高校はあきらめ、今春、特別支援学校に進んだ。車いすでの生活に合わせて家族は自宅を改装し、車を買い替えて介助を続ける。
生徒は柔道部で階級を上げるため、1年で11キロ余り体重を増やした。事故前も跳び箱に失敗することがあり、「中学で跳び箱が苦手になった」と感じていた。
事故当日、教諭は開脚跳びと台上前転の二つの技に取り組むよう指示。順番や段数は生徒に委ねた。この生徒は最初に開脚跳び、次に台上前転、再び開脚跳びに挑んで事故に遭った。
文部科学省が15年に全国の学校に配った「器械運動指導の手引」は、台上前転の後で開脚跳びに取り組むと回転感覚が残って事故につながりやすいと指摘する。
横浜市教育委員会は18年6月、有識者による調査報告書を公表。手引と違う手順で行われたことを認める一方で、本人がはっきり次の技を意識していたとして、「必ずしも技の順番の問題とは言えない」と結論づけた。市教委の担当者は取材に「学校管理下で起きた事故の大きさをしっかり受け止めている。報告書の内容を踏まえ、再発防止に取り組んでいる」と述べた。報告書の提言に基づき、開脚跳びに先に取り組むよう各校に通知したという。
子どもたち、守れますか 学校の死角
どんな時にどんな事故が起きやすいのか、小中高の学年ごとに分かる特設ページで考えます。
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