レストランの調理師だった男性(当時33)が劇症型心筋炎を発症し、後に死亡したのは過労が原因だとして、妻が国を相手取って労働災害と認めるよう求めた訴訟の判決が15日、大阪地裁であった。内藤裕之裁判長は、男性が長時間労働で免疫力が低下していたためにウイルスに感染して発症したと認め、遺族補償給付などを支給しないとした国の処分を取り消した。
判決によると、男性は大阪市中央区のレストランで調理師をしていた2012年11月、劇症型心筋炎を発症して入院。退院したが、14年1月に心不全で再入院し、同年6月に死亡した。男性は発症前の1年間、開店前の仕入れや閉店後の仕込み業務などに加え、定休日も出勤したことがあり、残業は月平均約250時間にのぼった。
判決は、男性を診察した医師の意見などをふまえ、急性心筋炎はウイルス感染が原因だと指摘。長期間かつ長時間の時間外労働で疲労が蓄積し、免疫力が低下して感染したと認め、発症と業務に因果関係があると結論づけた。
原告側代理人の波多野進弁護士によると、劇症型心筋炎は労災認定の対象疾病に含まれていないという。波多野弁護士は「長時間労働での免疫力の低下による労災を真っ正面から認めた判決。当然の結果だが、労災認定に新しい道が広がる意義がある」と話した。男性の妻は「夫もめちゃくちゃ喜んでいると思う。飲食店の経営者は、従業員が働きやすい環境を作ってほしい」と話した。
厚生労働省補償課は「判決内容を検討し、関係機関と協議した上で判断したい」とコメントした。(遠藤隆史)