今年1~3月期のGDP(国内総生産)は年率2・1%増となり、おおかたの予測を上回る高い伸びを示した。だが、専門家から「内容は数字ほど良くない」との指摘が相次ぎ、最近の「緩やかな景気回復」を支えてきた内需も、陰りが見える。米中の貿易摩擦が再燃するなか、景気の先行きは視界不良が続きそうだ。
20日朝、GDP1次速報が公表されると、民間のエコノミストたちは意外感をもって受け止めた。事前予測では、実質成長率は微減か横ばいという見方が大半だったためだ。
「正直言って、驚いた」と第一生命経済研究所の新家義貴・主席エコノミストは打ち明けた。ただ、景気は見かけの数字ほどには好調ではないとも指摘する。「輸入の減少によって成長率は大幅に押し上げられたが、内需の弱さの反映。決して喜べるものではない」
GDP統計で、外需は「輸出」から「輸入」を差し引いてはじき出す。今回は輸出、輸入ともに減ったが、減少幅では輸入が輸出を大きく上回り、結果的に外需のプラスがGDPの伸びの大半を占めた。輸入の落ち込みは、内需の柱である設備投資の鈍化が影響したとみられ、今回の結果は実力を反映したものとは言いがたいのが実情だ。
設備投資の落ち込み幅は予測より小さかったとはいえ、中国の景気減速は国内メーカーの姿勢にブレーキをかけている。日本工作機械工業会によると、1~3月の受注は前年同期比25・7%減の3658億円。中国向けだけでなく、国内向けの受注も大きく減った。
スマートフォン向け電池など電子部品を手がけるTDKでは、2019年3月期の設備投資額が当初予定を2割ほど下回った。山西哲司常務は「自動車、産業機器など主要な事業領域で受注状況が悪化した」。計画していた投資も先送りするという。
産業機械大手の安川電機もあおりを受けている。19年2月期の売上高は2回にわたって下方修正を余儀なくされた。小笠原浩社長は中国市場の今後について、「(見通すのが)非常に難しい」と話す。(高橋諒子、田幸香純)
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