カイシャで生きる 第26話
寝耳に水の話だった。
1997年11月24日。四大証券の一角を担っていた山一証券は、巨額の簿外債務が発覚し、経営破綻(はたん)に追い込まれた。
千葉支店の副支店長だった永野修身さん(60)は当時39歳。部下たちと一緒にテレビを見ると、画面の中に自分たちの社長がいた。泣いていた。
「私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから!」
特集:カイシャで生きる
組織の歯車として一日一日を懸命に生きる。ときに理不尽な人事や処遇に苦しんだり、組織と決別して新しい人生を歩むことを考えたり。さまざまな境遇や葛藤を経験しつつ、前に進もうとする人々の物語を紡ぎます。
記者会見した当時の野沢正平社長(81)は顔をくしゃくしゃにしながら社員をかばった。
永野さんの子どもはまだ小学生で、住宅ローンも残っていた。当時の千葉支店の業績は好調で、黒字だった。なぜこんなことに? これからどうなってしまうのか?
ハゲタカ
翌朝、支店の2階の窓から外を見た。
山一証券に預けた資産の解約を…