多事奏論 編集委員・原真人
米国で、民主党左派から「財政赤字をいくら増やしてもへっちゃら」という主張が広がり、経済学者たちを巻き込んで大論争中だ。自国通貨を発行できる政府は、通貨を際限なく発行できるから財政赤字の大きさは問題ないという主張で、「MMT」と略して呼ばれる。
「Modern Monetary Theory=現代金融理論」。金融理論だと名乗っているので、さぞ理路整然とした経済論文があるのだろうと思われがちだが、体系だった理論はない。いわば「放漫財政のススメ」とでもいうべき曲論である。
こんな政策をやって通貨価値が急落して超インフレになったらどうするのか、という批判に、MMT論者たちは「簡単には起きない。兆しがあれば、すぐに正常な財政に戻せばいい」とおおまじめに答える。
放漫財政に陥った政府が一瞬にして堅実財政に立ち戻るなど、ありえそうもない。だから、財政拡大や金融緩和に積極論のノーベル賞経済学者、ポール・クルーグマン氏でさえMMTを批判している。他の主流派経済学者たちもこぞって批判的だ。
悪評ふんぷんのMMTだが、提…