「女性初の首相候補」。1993年に衆院初当選し、安倍晋三首相と同期の野田聖子さんは、ずっとそう言われてきた。女性議員の占める割合が1割という男社会の国会で、少数派は「ガラスの天井」を打ち破れないのか。セクハラ、働きながらの子育てと、一般社会の女性たちが直面する悩みとも向き合ってきた野田さんに聞いた。
――小中高校の後輩でもある雅子さまが、皇后になられました。
「雅子さまは、戦後の男女平等の環境で学び、社会人を経験したという点で、私たちにとって等身大の存在です。そしてキャリアと妊娠・出産問題のはざまで、大変ご苦労されるなど、女性としての懊悩(おうのう)を経験されています。そのままのお姿で、新しい時代も歩んでいただきたいと思っています」
――野田さんも、政界入りした平成初めのころは「懊悩」を経験しましたか。
「当時、政治家というのは女性がやってはいけない仕事の一つでした。そもそも『女性が何で働くの?』という男の人たちの素朴な疑問が根強くて。すでに少子化は始まっていたけど、『男たる国会議員が口に出す政策ではない、些末(さまつ)な問題だ』と私は言われてきました。今は手のひらを返したように『少子化問題の解決を』と言っているけど。まだ本音では女性が政治家である必要はないと思っているんじゃないかな」
――セクハラを受けた、ということも公表しています。
「当時のセクハラは今と違い、男の人がやる仕事にあえてチャレンジするんだから、されても文句を言うな、という感じだったと思います。そういうことを乗り越えて初めてこの職につけると。修行みたいなものでした」
政治家の能力は「男性である」こと
――セクハラをやり過ごしてきたことが、昨年の財務事務次官のような問題につながったのでは。
「当時はセクハラという発想がなかったので、後に続く女性のために抗議しようとは思いませんでした。でも長年かかって、多くの人たちの努力が積み重なり、セクハラが感情論ではなく人権侵害と説明できるようになった。当時の私が言えなかったんだから、今の20代も言えないだろうなと察して若い人を支えたいと思います」
――後援会からは「結婚するな」とも言われたそうですね。
「そういうもんだと思っていま…