三菱航空機(愛知県豊山町)が、国産初のジェット旅客機「MRJ」の名称を「スペースジェット」に変更する方針を固めた。納入延期を繰り返したMRJのイメージを刷新し、受注拡大を目指す。開発費が6千億円超に達する大型案件の戦略転換といえそうだ。
MRJは「ミツビシ・リージョナル・ジェット」の頭文字に由来するが、リージョナルには「地域の」という意味があり、「狭いイメージを連想する」との指摘もあった。新名称は三菱を外す一方、スペース(空間)という単語を使う。小型機ながら広い室内空間が実現できることをアピールする狙いもありそうだ。
三菱航空機は座席数がおよそ90席、70席の2種類の機体を開発している。90席の機体から実用化を目指すが、今後は需要のある70席規模の機体も開発を加速させる。最大市場の米国では、90席規模の機体が航空会社の労使協定によって運航できない状況が続いているからだ。70席規模は協定に該当せず、他社も古いモデルしか用意していない。航空アナリストの杉浦一機氏は「90席規模の機体だけだと需要を取りこぼすおそれがある。70席規模の機体開発が重要になる」と指摘する。
そのため、受注が見込める米国に拠点を移したり、一部の国産部品を海外製に切り替えたりする可能性がある。ただ、主力機を変更することで投資回収の時期が遅れる可能性が出てきた。MRJは「国産初のジェット旅客機」を掲げて開発に取り組んできただけに、国内部品メーカーの反発も予想される。三菱航空機は6月に開かれる世界最大級の航空ショー「パリ航空ショー」に合わせて、こうした計画を公表するとみられる。(初見翔)