関西経済連合会で副会長を2005年から14年間務めた、引っ越し大手アートコーポレーションの寺田千代乃社長(72)が27日の定時総会で退任し、財界活動を卒業した。一代にして会社を成長させた女性経営者として知られ、関西財界の一翼を担った。
「会社も財界活動も男性、女性ということを考えていたらできない。関西財界でも、自然と女性がいるのが普通だという雰囲気ができていった」。今月中旬、朝日新聞の取材に対し、寺田社長はこう振り返った。女性初の副会長となり、現役の関経連副会長のなかでは、井上礼之・ダイキン工業会長(在任18年)に次いで2番目に在任期間が長かった。寺田社長は関経連で、文化や観光の振興などに独自の視点を発揮した。
引っ越し専門会社の先駆けとなる「アート引越センター」を立ち上げたのは1976年、夫と始めた運送会社が母体となった。財界活動は、ファッションデザイナーのコシノヒロコさんらと85年に関西経済同友会へ入会して以降、三十数年に及んだ。2002年には同会で女性初の代表幹事に就任。「大阪ブランドの向上」を掲げ、1人100円、100万人の募金をもとに大阪のまちを美しいバラで飾ろうと先頭に立った。
25年大阪・関西万博の開催が決まり、その会場となる大阪湾岸の人工島・夢洲(ゆめしま)では、カジノを含む統合型リゾートの誘致話も進む。寺田社長は「『いまこそ関西の復権の時だ』というフレーズは何度も言われてきたが、関西の各地域が協調しながら成長できる絶好の機会。関西財界は、この機を絶対に逃がしちゃいけない」と強調した。(辻森尚仁)