岩屋毅防衛相は1日、シンガポールで開かれているアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で演説した。北朝鮮の核・ミサイル能力について「本質的な変化は生じていない」と強調。「最大のリスクは、北朝鮮の非核化に向けた国際社会の団結が緩むことだ」として、国連安全保障理事会決議の完全な履行へ団結を求めた。
北朝鮮が5月9日に短距離弾道ミサイルを発射したことは「安保理決議に違反するもので極めて遺憾だ」と批判。北朝鮮が日本全域を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有し、実戦配備しているなどとして、安全保障上のリスクは取り除かれていないとした。
北朝鮮の非核化に向けた取り組みについては「外交を通じて実現されることを強く期待している」としつつ、防衛当局の役割は「確たる抑止力を維持することだ」と主張。日米、日米韓の連携や、海上で違法に物資を積み替える「瀬取り」に対する監視を強める重要性を訴えた。
演説後の質疑応答で、岩屋氏は「短距離ミサイルであれば批判されないと、北朝鮮に誤解を与えてはいけない」と述べ、5月9日に北朝鮮が発射したのは短距離弾道ミサイルだとして批判した意図を明かした。(シンガポール=山下龍一)