日韓関係は1965年の国交正常化以降、最悪と言われる。元徴用工らへの賠償問題は日韓請求権協定で完全に解決したはずだったが、韓国大法院(最高裁)は昨年10月、日本企業に賠償を命じた。出口は見えないが、河野太郎外相は関係改善への期待は捨てていない。その鍵となる一つが、韓国の康京和(カンギョンファ)外相との関係だ。
5月23日、パリ。日韓外相会談に先立ち、河野氏と康氏はメディアの前で握手を交わした。約5秒間。二人は目を合わせない。康氏は河野氏にほほ笑みかけたが、河野氏は康氏の方を向かずに席に着いた。
会談で仕掛けたのは河野氏だった。メディアに公開された会談の冒頭、康氏をしかりつけるような口調で語った。「事の重大性を理解していない」。批判の矛先は韓国外交省の報道官。この日の記者会見で「日本企業が大法院の判決を履行する場合、何の問題もない」と述べていた。「日韓請求権協定で解決済み」という立場をとる日本政府にとって到底、受け入れられない発言だった。
終了後には記者団の取材に応じたときも河野氏の不満は収まらなかった。会談で康氏に「文在寅(ムンジェイン)大統領が責任を持って対応策を考えていただかなければ解決に結びつかない」と伝えたことを明らかにした。康氏では話にならない、と言わんばかりだ。
康氏に厳しい姿勢で接する河野氏。しかし、実際には二人の関係は悪くないという。外務省幹部によると、二人は事務方を通さず、携帯電話で話をすることもある。
意気投合した「転校生」二人
パリから帰国した後の5月26日、愛知県豊川市。河野氏は講演で康氏とのエピソードを披露した。
話は2017年8月にさかのぼ…