仕事の付き合いや世代を超えて集まる、働く女性たちの会「よこの会」(大阪市北区)が設立35年を迎えた。関西を中心にした30~80代の約100人が会員。働き続ける女性が少なかった時代から管理職が増えつつある現在まで、時代が変化するなかで互いに刺激し、悩みを相談できる貴重な場であり続けている。
会は男女雇用機会均等法が成立する前年の1984年5月、二十数人で始まった。大阪市内でコミュニティーペーパーを発行していた女性らが、女性のための会をつくろうと知人らに声を掛けた。「よこ」には、横のつながりを大切にしてネットワークを育てようという思いを込めた。
設立時からの会員で、広告大手、博報堂の元営業部長の丸子喜代子さん(78)は「困った時にどう乗り越えるか。孤軍奮闘だった女性たちが体験を元にアドバイスしあった」と思い起こす。
当時は結婚を機に仕事をやめる「寿退社」が当たり前とされた時代。ネットもなく、情報が入りにくかった。丸子さん自身も90年代まで会議に出れば周りは男性ばかりだったという。
メンバーらは毎月、集まった。上司との関係や仕事と家庭の両立など悩みを語り合い、活躍する女性を招いた講演会を企画した。
年間の活動テーマを見ると世相が浮かぶ。「職業能力を磨く」(89年)や「実績をつくる」(96年)から、99年は「働く女性にとっての『豊かさ』とはなんですか」。男女共同参画社会基本法が成立した年だ。
2004年は「生きる・楽しむ・働く」で、ワーク・ライフ・バランスを意識した会合を開いた。時代の一歩先を行くのを会のモットーとしてきた。09年のテーマは「今だから考える、良質な働き方」だった。
仕事と家庭の両立が、次第に珍しくなくなっていく。前会長の宅見央子さん(49)は、製菓大手、江崎グリコの管理職。11年に初めて参加した。平日夜にあった集まりは子育て中で出席できなかったが、土曜日の昼間の会合を見つけ、一人で出向いた。「社外での仲間がほしかった。色々な分野の人がいた」と言う。
13年には、会の中に「管理職おしゃべり会」という分科会を立ち上げた。職場で部下を持つ十数人がメンバーになっている。
会長ら役員が頻繁に交代するのが会の特徴だ。身につけた知恵を次の世代につなげている。多くの会員が運営を経験することで、会も活性化しているという。
丸子さんは「毎月の積み重ねが35年続いた。みんなをほめてあげたい」。今年、15代目の会長になった三井化学勤務の山神敦子さん(53)は「お互いに磨き合っていきたい。人生の楽しみの一つに、よこの会があればうれしい」と願う。
いまはSNSでつながりが生まれ、異業種交流会が一般的になった。そんな中、設立時からの理念を大切にしながら、「会員がリーダーとして働きつづけることが、これからの会のテーマ」と宅見さんは言う。
よこの会は会員を募っている。問い合わせはメール(info_yoko1984@yokonokai.org)で。(徳永猛城)
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よこの会の主な活動テーマ
1989 職業能力を磨く
90 働く女性の一生
93 きわどい時代を生きる、国際的視野で
96 実績をつくる
99 働く女性にとっての「豊かさ」とはな
んですか
2004 生きる・楽しむ・働く
05 視点を変えてみませんか
09 今だから考える、良質な働き方
17 未来の私につながる働き方
※テーマを設定しない年もある