中東・ホルムズ海峡付近で13日、日本の海運会社・国華(こくか)産業(本社・東京)が運航するタンカー「KOKUKA COURAGEOUS(コクカ・カレイジャス)」(パナマ船籍、全長170メートル、総トン数1万9349トン)が航行中に複数回攻撃を受けた。国土交通省が同日発表した。フィリピン国籍の乗組員21人にけが人はなく、全員船から避難したという。
日本関係の船など、攻撃受ける ホルムズ海峡近く航行中
船舶の位置情報を公開するサイト「マリントラフィック」のデータによると、タンカーはイラン沿岸から南に約50キロのオマーン湾で攻撃を受けたとみられる。国交省の説明では、同じころに近くを航行していたノルウェーの船も攻撃されたとの情報があるという。何者による攻撃かは分かっておらず、国交省などが情報収集している。
米海軍第5艦隊も声明で、オマーン湾で船2隻が攻撃を受けたとの情報があったと発表した。相次いで救難信号を受け、誘導ミサイル駆逐艦を派遣して支援にあたっていることを明らかにした。
国華産業は三菱ガス化学の関連会社。三菱ガス化学の依頼を受けた国華産業が、ドイツ企業のシンガポール法人に運航を委託していたという。
国華産業によると、タンカーは10日午前にメタノール2万5千トンを積んでサウジアラビアの港を出港、タイやシンガポールに向かっていた。
1回目の攻撃は13日午前11時45分(現地時間同日午前6時45分)ごろ。左舷後方のエンジンルーム付近に攻撃を受け、この部分から出火した。エンジンを止めて消火活動をしていた最中の同日午後3時ごろには左舷中央部に2度目の攻撃を受けた。被害はいずれも海面上に出た部分にあり、砲弾が当たったとみられるという。
ホルムズ海峡付近では5月中旬にも、サウジアラビアの石油タンカーがオマーン湾を航行中、何者かに攻撃を受けた。国交省はこの直後、周辺を航行する際はできる限り注意するよう、業界団体を通じて日本の海運会社に通達していた。今回の攻撃を受け、再び注意喚起したという。
原油の輸入の9割近くを中東に頼る日本にとって、ホルムズ海峡は「エネルギー政策上の生命線」(業界関係者)だ。全体の約40%を頼るサウジアラビアをはじめ、約25%を占めるアラブ首長国連邦、カタール、クウェートといった主要な輸入先の国々はペルシャ湾に面しており、日本の原油輸入の8割は、タンカーでホルムズ海峡を通る。液化天然ガス(LNG)でも、日本の輸入量全体の2割がホルムズ海峡を通過して日本に来るという。
政府は13日午後、首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置。安倍晋三首相は「関係国と連携しつつ、情報収集及び乗組員の安全確保に万全を期すること」と指示した。
今回の攻撃を受けて、国連安全保障理事会は13日午後(日本時間14日午前)、非公開の緊急会合を開き、対応を協議する。安保理関係者によると、米国が開催を要請したという。