警察の取り調べの際に採取されたDNAのデータや指紋が、不起訴になっても保管されているのはプライバシー権を規定した憲法13条に違反するとして、名古屋市の50代の保育士女性が13日、国にデータの抹消と慰謝料150万円を求め、名古屋地裁に提訴した。
訴状によると、女性は2014年、いなくなった知人の犬を探すため、同市天白区の電柱にチラシ9枚を貼った。愛知県警天白署から「チラシを電柱に貼るのは条例違反だ」と出頭を求められ、同年8月、指紋とDNAを採られた。DNAは「天災時に身元判明につながる」と言われたという。
女性はその後、不起訴になり、電話で天白署にDNAなどデータの削除を求めたが説明はなかったという。
提訴後に記者会見した代理人の川口創弁護士は「DNA型のデータベースの構築や運用は、国家公安委員会の規則で定められているだけで、根拠法が明確でない」と指摘。「DNAのデータが集められ、一度登録されれば原則として死ぬまで犯罪の照会の対象になる。個人の尊厳を踏みにじるものだ」と話した。
川口弁護士によるとDNA型データベースは2005年に運用が開始され、18年末時点で登録件数は累計で121万3928件に上るという。