バスケットボールの世界最高峰、米プロNBAは20日(日本時間21日)、全30チームが新人選手との契約交渉権を得るためのドラフト会議をニューヨークで開き、全米大学体育協会(NCAA)1部・ゴンザガ大の八村塁(はちむらるい、21)が、1巡目の全体9位でワシントン・ウィザーズから指名された。日本選手がNBAドラフトの1巡目で指名されるのは初めて。
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「ワシントン・ウィザーズは八村塁を指名した」。そう会場でアナウンスされると、うつむいていた八村は顔を上げ、右手で上を指さし、笑みを見せた。
家族や関係者と抱き合って壇上に登り、ウィザーズの帽子を受け取ってかぶった。胸には日の丸のピンバッジ。司会者から気持ちを聞かれ、「クレージー。現実とは思えない。家族にとっても日本にとっても大きな意味がある」と語った。
「まず、中学時代のコーチに感謝したい。最初に会ったときから『君はNBAに行くんだ』と言われ、ずっと信じてきた。高校、大学の監督、コーチ、トレーナーにも感謝したい」と英語であいさつ。その後、日本語で「みなさん、やりました。日本人初、NBA(ドラフト1巡目指名)です」と興奮気味に話した。
八村は富山市出身。西アフリカのベナン人の父と日本人の母を持つ。宮城・明成高時代に全国高校選抜優勝大会(現全国高校選手権)で3連覇を達成し、NCAAの強豪・ゴンザガ大に進んだ。身長203センチのフォワード。2018~19年シーズンは持ち前のシュート力を生かして全米大学選手権でチームを8強に導いた。全米コーチ協会の「ベスト5」に選ばれるなど多くの賞を受賞し、NCAA有数の実力選手となった。
来年の東京五輪では日本代表として活躍が期待されている。
NBAドラフトは2巡目まで行われ、指名されるのは60人。米4大プロスポーツのドラフトで最も狭き門だ。19年の大リーグ・ドラフトでは千人以上、7巡目まであるアメリカンフットボールNFL、アイスホッケーNHLでも200人以上が指名された。
NBAドラフトは原則、前シーズンの下位チームから順に指名する「ウェーバー制」。大学3年生の八村は卒業を待たずドラフト対象となれる「アーリーエントリー」制度を利用した。
八村がNBAの試合に出場すれば日本選手で3人目。ドラフト経由でのデビューは初となる。
日本選手では過去、04年に田臥勇太(現・Bリーグ栃木)が若手の登竜門・サマーリーグなどを経てサンズと契約し、NBAに出場。18~19年シーズンには渡辺雄太が、下部リーグでプレーしながらNBAに出場できる「ツーウェー契約」をグリズリーズと結び、15試合でプレーした。
また、現在のドラフトのようには指名人数が制限されていなかった1981年には、住友金属に所属していた岡山恭崇がウォリアーズから8巡目の171位で指名されたが、契約には至らなかった。(ニューヨーク=松本麻美)