今年10月に消費税率が10%に上がるのは、ほぼ確実となった。「リーマン級」の経済危機が起きた場合に再延期する余地を残すものの、増税まで残る期間はわずか3カ月余。安倍政権は2度も増税延期を繰り返してきたが、政治判断としての3度目はなさそうだ。増税反対で一致する野党との間で、参院選の大きな争点となる。
21日に閣議決定した政策の指針である「骨太の方針」に、10月の消費増税を明記した。安倍晋三首相はこれまで「リーマン・ショック級の出来事が起きない限り、消費税率を引き上げる」と繰り返し、3回目となる延期を行う余地を残してきたが、政治判断での先送りはもはや困難だ。
今年3月に成立した2019年度予算には、キャッシュレス決済をした買い物客へのポイント還元制度やプレミアム商品券などの消費増税対策を2兆280億円分も盛り込んだ。首相周辺は「増税を延期する場合は、国債増発か予算を組み替えるしかない」。
増税実施を変更するには法改正も必要だが、通常国会は26日に閉会を予定している。「消費税の使い道を変えて(17年に)自ら判断して解散している。延期を繰り返した過去と状況が根本的に違う」。首相官邸幹部が指摘するように、新たな税収の使い道を「安倍色」に染め上げたことも予定通りの実施を変えない理由だ。
前回の衆院選前の17年9月、首相は2兆円を使って教育無償化を進める政策を打ち出した。税収はもともと、野田政権下の12年6月に民主党と自民、公明による「3党合意」で5分の4を借金の返済に充てることを決めていたが、それを反故(ほご)にしての判断だった。
一方で、3党合意にある低年金者らを対象に月5千円などを支給する制度は、今回の増税時にスタートさせる。政府関係者は「これだけは、ちゃんとやりたいという思いが首相にある」と語る。高齢者の支持を意識しているのは明らか。3回目の延期によって、6年半に及ぶアベノミクスが「失敗」という批判を受けるより、増税による税収増で使う政策をアピールするほうが得策という判断も透ける。
しかし、世界経済は米中貿易紛…