アメリカのトランプ大統領が、日米安全保障条約を破棄する可能性に言及したと報じられ、波紋が広がっています。「親しい人物との私的な会話」での発言とされ、米政府当局者も「あり得ない」と否定していますが、そもそも破棄の可能性はあるのでしょうか。政治記者として日米関係を長く取材してきた三浦俊章・朝日新聞編集委員に聞きました。
――発言報道にどんな感想を持ちましたか。
私は政治記者で疑い深いので、何らかの観測気球かもしれないと思いました。元になった米メディアの記事は、トランプ氏の周辺の関係者3人から確認を取ったものだとして書かれているからです。貿易交渉などで米国の政権が日本を揺さぶろうとしている可能性があり、今後、日本に譲歩を迫るというひとつのサインなのではないかと、私は思います。トランプ氏は非常に気まぐれなので、色々なことを言っているだけかもしれませんが。
――そもそも、この条約は破棄できますか。
条約の第10条に書いてある通り、破棄は可能です。日米安保条約はまず1951年に調印されましたが、米国の占領下で結ばれたので、米国が日本を防衛する義務はあまり明確に書かれていませんでした。日本でもし内乱が起きたら米軍が出動できるという、独立国としてはいかがなものかという内容もあったので、安倍晋三首相のおじいさんの岸信介首相(当時)が60年に改定して、日米の関係がより対等に近いものになりました。
この改定で、日米安保条約は10年間効力を持つとされ、その後はどちらか一方が条約を終了させる意思を通告することができるということになりました。通告から1年後に条約は失効します。つまり、70年以降はどちらかがやめたいと通告したら、1年後には失効するという形です。ただ、今までどちらの政府もやめたいと言ったことはありません。
――破棄を求める主張は日本国内にありますね。
おそらく、伝統的に右派と左派…