ハンセン病患者に対する国の隔離政策で差別を受け、家族の離散を強いられたとして、元患者の家族561人が国に損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁(遠藤浩太郎裁判長=佐藤道恵裁判長代読)は28日、元患者の家族への賠償を命じる判決を言い渡した。
国のハンセン病政策をめぐっては、遅くとも1960年以降は治療法の確立などで隔離の必要がなくなったとして、元患者に対する国の責任を認める判決を2001年に熊本地裁が出し、国が控訴を断念。元患者らへは補償がなされたが、家族の被害は顧みられないままだった。
元患者の子や兄弟らは16年、96年のらい予防法廃止まで国が隔離政策を進めた結果、家族への偏見や差別が生じたなどとして提訴。原告計561人が、1人当たり550万円の賠償を求めた。
裁判で原告側は「過酷ないじめを受けたり、離婚されたりするなど差別を受けた」と主張。家族関係を築くことも妨げられ、こうした家族の被害は現在も続いていると訴えた。
国には、遅くとも60年以降には隔離政策を抜本的に変える義務と、家族に対する偏見や差別を取り除く措置をとる義務があったと主張。遅くとも65年以降に同法の隔離規定を廃止しなかったのは違法として、国会議員の責任も問うた。
国側は「隔離政策の対象は患者本人で、家族を対象としていない。直接的に家族への偏見や差別を作り出したり、助長したりしていない」と責任を否定。国会議員についても「予防法を廃止しなかった不作為は、家族に関しては違法とは言えない」と反論していた。