29日に閉幕した大阪市での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言は、米中貿易摩擦や気候変動での米国の孤立などを受け、各国協調の難しさが随所ににじむ内容となった。
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米中貿易摩擦が激化する中、貿易については「自由、公平、無差別な貿易及び投資環境を実現するよう努力する」との表現を盛り込んだ。中国が求める「無差別」、米国が求める「公平」がいずれも入り、各国への配慮をにじませた。政府関係者は米国を念頭に「この表現ですら、反対する国があった」と話す。
保護主義的な動きを強める米国の反対で、昨年初めて削られて注目を集めた「反保護主義」への言及は、対立を避けるために今年も見送られた。さらに、朝日新聞が入手した宣言の原案段階で序文にあった「自由貿易の促進」との言葉も、最終の宣言からは抜け落ちていた。米国などの反対があった可能性がある。
世界貿易機関(WTO)についても多くを割いた。日米欧が問題視する紛争解決制度の改革について、「行動が必要であることに合意する」。電子商取引のルール作りの交渉についても重要性の確認を盛り込んだ。米国などがWTOに失望する状態が続けば、貿易問題の解決がいっそう困難になるとの危機感がある。
世界経済の認識については「成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている」と警告。「何よりも貿易と地政(学)をめぐる緊張は増大してきた。これらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある」とアピールした。(岩沢志気、西山明宏)
パリ協定 「米国と米国以外」、立場鮮明に
首脳宣言づくりで「最後の最後まで紛糾した」(交渉筋)のは環境分野での地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の扱いだった。宣言では協定離脱を表明している米国と、それ以外の19の参加メンバーの姿勢の違いが鮮明になった。
昨年のアルゼンチンでのG20サミットの首脳宣言では、米国の離脱表明を明記する形で、ほかの国・地域とわけた。今回日本政府は米国を孤立させず、全参加メンバーが合意できる内容を模索した。
だが前回宣言からの「後退は受け入れられない」などと欧州勢が反発。仏中両外相と国連事務総長の3者で、気候変動に取り組む緊急性を訴える共同声明も出した。
今回の首脳宣言は、米国以外の…