市民に開かれた杜(もり)のスタジアム――。2020年東京五輪・パラリンピックで、開閉会式や陸上競技などが行われる新国立競技場(東京都新宿区、渋谷区)の姿が、はっきりと見えてきた。五輪開幕まであと387日となった3日、ほぼ9割が完成した建設現場が報道陣に公開された。新たな競技場の特徴を表すキーワードは、風と木だ。
記者はこの日午前11時前、競技場南側の歩行者デッキから1層目の西側スタンドに入った。この日は曇り。屋根も完成し、コンコースからは涼しい風が吹き抜けた。担当者は「自然風を取り込んでいる。屋根が観客席を覆うので、体感温度は10度は下がる」と説明した。「気流創出ファン」と呼ばれる大型の扇風機も試運転され、風を送り出していた。
新国立競技場は建設費を抑えたため、観客席に空調設備がない。その代わりに、自然換気で涼を取る。最上部には風を導く大きなひさしがあり、暑い時は観客席に涼しい風が入り、冬は冷たい風が上に逃げるよう計算されている。このほか「気流創出ファン」を1階、3階に計185台設置したほか、霧を噴射するミスト装置を1、2階の入り口計8カ所に備え付ける。
スタジアムにいると、木材がふんだんに使われているのが見て取れる。「全ての日本人の心を一つにする競技場をめざした」。デザインを担当した建築家の隈研吾氏の思いが、随所にちりばめられている。
スタジアム外周部を360度囲…