本当にこんな場所に?
1995年に火災で全焼した元ストリップ劇場の「明野劇場」=2019年4月8日、茨城県筑西市新井新田
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各地に残された「廃虚」には、様々な記憶が封じ込まれています。茨城県筑西市にある元ストリップ劇場は、20年以上前に火災に見舞われ中は真っ黒という、想像するだけでぞっとする場所です。そこで見たのは、昭和のバブルの残像と、全国で問題化している所有者がわからない空き家の現実でした。
水戸市から車で約1時間。県西地域に位置する筑西市は農業が盛んで、小玉スイカや梨が特産です。目指す「明野劇場」は、市の中心部から8キロほど離れたところにあります。車から見える景色は田畑に変わり、本当にこんな場所にストリップ劇場があったのか、と疑問も湧いてきます。
目的地の近くに車を止めて外に出てみると、目に映ったのは空を舞うカラスの大群。劇場に続く小道の脇には杉林がうっそうと茂り、不気味さを増長させます。この日はあいにくの曇り空で肌寒く、足取りはさらに重くなりました。
明野劇場をインターネットで検索してみると、夜に中に入って「肝試し」する人も多いようで、劇場内部の写真とともに心霊スポットとして紹介されています。
今回は、事前に会社が登録しているネットサービスで登記情報を取得し、土地の所有者に連絡を取り、取材の了解を取りました。県内に住む所有者の男性によると、劇場側に土地を貸したのは男性の父親で、男性も詳細は知らないとのこと。もう何年も足を運んでいないが、「ゴミを勝手に捨てる人がいて困っている」と話していました。
劇場近くに掲げられた「ごみ捨て禁止」の看板=2019年4月8日、茨城県筑西市新井新田
「これほんと無理です!」
実際に劇場を見て、男性が言っていた意味が分かりました。劇場の前に、大量のゴミが散乱していたからです。そしてゴミからは強烈な異臭が……。念のためにマスクを着けていましたが、それも意味をなさないほどの臭いです。付き添いをお願いした後輩記者は「これほんと無理です!」と言い放ち、すぐさま車に戻っていきました。ゴミをよく見てみると、旧型テレビや冷蔵庫といった粗大ゴミ、イカの塩辛や生卵などの生ゴミがありました。これがカラスを引き寄せている原因のようです。
劇場前には大量のゴミが不法投棄され、悪臭を放っていた=2019年4月8日、茨城県筑西市新井新田
悲鳴をあげながら進む
このゴミの山を通らないことには目的地に着けない。ストッキングにパンプスの足元を恨みながら、できるだけ生ゴミを踏まないよう慎重に歩いていきます。マスクを着けて戻ってきた後輩と悲鳴を上げながらも突き進み、やっとのことで建物の前までたどり着きました。
劇場前には、生ゴミやペットボトル、旧型テレビが捨てられていた=2019年4月8日、茨城県筑西市新井新田
うっすらと「明野劇場」
木々がうっそうと茂る中にぽつんと立つ木造鉄骨造りの建物には、うっすらと「明野劇場」の文字が見えます。入り口の左手には小窓があり、客がチケットを買う場所だったのかもしれません。中に入ると、壁の一部が崩れていたり、天井や壁の至るところが黒くこげていたりして、火災の跡が見えます。
劇場内は椅子が散乱し、丸いお立ち台が焼けずに残っていた=2019年4月8日、茨城県筑西市新井新田
当時の新聞記事
この火災について報じる記事が朝日新聞のデータベースに残っていました。1995年1月23日付の朝刊に掲載されたものです。
「22日午後3時10分ごろ、…