（１４日、高校野球島根大会 平田６―１邇摩）

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九回表の守備に入る前、邇摩の田中歩武（あゆむ）主将（３年）は石崎敏彦監督から交代を告げられた。

４番一塁手で先発出場したが、８回まで三打数無安打。「結果を出せていなかった」と理解はしていたが、「最後まで試合に出たい」と悔しさがこみ上げた。ベンチに退いてからは、試合が終わる瞬間まで、主将として勝利を信じ、声をからしてグラウンドの仲間を鼓舞した。

「自分はどちらかと言えば内向的なタイプ。主将としてチームをまとめるのは大変で、思うようにいかないことも多かった」。試合後、涙をにじませながら、主将として過ごした１年を振り返った。

現在、東京で美容師をする３歳年上の兄・良汰さん（２０）も、邇摩で主将をしていた。「兄は社交的な性格。自分とは全然違います」

自分も兄のような立派な主将になりたい。だが、昨秋の県大会では初戦でコールド負け。冬場の練習でも思うようにチームをまとめられず悩んだ。良汰さんに電話で「なかなかチームが同じ方向を向かない」と相談した。良汰さんからは「お前らしくチームを引っ張ってけばいい」と言われ、その言葉に肩の荷が下りたような気がした。

練習でも周囲をよく見て、率先して声を出し、チームの雰囲気をつくれるよう努力した。石崎監督は「なかなか勝てないチームで、主将としてつらいことも多かったと思う。だけど、よく成長してくれた。良い主将だった」とねぎらう。

悔しい結果に終わったが、チームはすべての力を出し切った。だから田中君は兄にこう報告したいと思う。「自分らしく、悔いの残らないように戦えた」。最後は笑顔だった。（浪間新太）