最近、日本で日本企業の一部を国内に「呼び戻す」計画が動き出し、米国の国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は米国企業の回帰や一部企業の東南アジアへの移転を奨励すると打ち出し、「外資の中国からの撤退」に関する話題が注目を集めている。(文:李計広・対外経済貿易大学教授。「北京日報」に掲載)
新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、国内で特定の商品が不足するようになった。これが一部の国が企業の回帰を望むようになった原因の1つであることは確かだ。しかし客観的にみると、外資系企業の国境を越えた投資は長期的な資本の活動であり、中長期的な視点でみる必要がある。政府が企業を回帰させたいと思っても、決定権はやはり企業にある。それ自体は当たり前の資本流動の現象だ。たとえば重症急性呼吸器症候群(SARS)の際には、流行期間に外資系企業の投資額がそれ以前に比べて減少したが、その後のデータは急速に反転上昇し、グローバル産業チェーンにおける中国の位置づけは低下しなかったばかりか、「質量ともに上昇した」。中国米国商会が最近行った調査では、回答した企業の63%が「2020年に対中投資を拡大するつもり」と答えた。最近は米国資本による中国金融市場への投資が活発だ。率直に言えば、資本の最終的な流動に影響するのは市場のポテンシャル、労働力コスト、ビジネス環境などの長期的要因だ。感染症のような緊急事態は、長期的な投資の方針決定に与える影響は限定的だ。
企業自身の選択について言えば、移転は新たな投資を行わなければならないことを意味する。感染症の爆発的拡大による経済の落ち込みが、企業から新たな投資を行う原動力を大いに奪った。専門機関の予測では、今回の感染症を経て、欧米経済は復興に2年ほどかかる見込みで、中国以外の中南米、東欧、東南アジアなどの新興市場は弱点分野が多く、感染症、通貨レート、債務の3大要因がドミノ倒しのきっかけになる可能性が高い。よって多国籍企業にとって今後しばらく最も重要になるのは、現金を保留することと投資を減らすことであって、新たな資本を投下することではない。こうした現実から考えて、政府が回帰にかかるコストの一部を補助したからといって、すぐに回帰が実現するはずがないことは明らかだ。また中国が感染症対策の過程で示した強大な組織力、操業再開を推進する管理能力は、ポテンシャルを備えた他の市場よりも中国に優位性があることは、テクノロジー、メディア、通信(TMT)産業チェーンにおける世界のリーディングカンパニーの間で広く共有された共通認識だ。
資本の流動にはそれ自体の法則があり、「政治的圧力」によって移転するものではないとある程度は言える。米国学者のマイケル・コリンズ氏の研究によれば、2002年から18年までの間に、米国の製造業38業界のうち、37業界で工場の数と従業員の数が減少し、特に重要な基礎的業界で持続的に低下したという。これはつまり、米国政府はここ数年全力で製造業の回帰を呼びかけてきたが、製造業の「空洞化」が進む情勢は根本的には変わっていないということだ。一部の国は製造業を強制的に回帰させる措置を取っているが、私たちはそれほど気にとめる必要はない。もちろん、個別の外資系企業が生産能力を中国市場から移転させる動きに対して、私たちはそのマイナス影響を真剣に検討評価して、理性的に対処するべきだ。
中国には何枚も切り札がある。220業界は生産量が世界一で、中国は世界で唯一の全工業分類を備えた国であり、内需市場はまだ完全に開発されておらず、熟練した作業員とエンジニアのストックでも世界一だ。こうしたことがグローバル産業チェーンにおいて中国に唯一無二の価値を与えている。グローバル産業チェーンの動向をはっきり見定め、政策のストックをしっかりと十分に活用すれば、私たちは中国の産業の好調さを保証することができ、さらにはグローバル産業チェーンにおける中国の優位的立場を維持することもできる。(編集KS)
「人民網日本語版」2020年4月16日