旧式の三輪車を改造した北平機器の「煎餅」屋台(撮影・勝又あや子)
北京市朝陽区百子湾にある皇包車大院で9月12日と13日、「2020煎餅フェスティバル」が開催された。人民網が伝えた。
日本でいう煎餅(せんべい)は、うるち米をつぶすかつくかして延ばし、直火で焼いた米果を指す。だが、中国の煎餅(ジエンビン)は、漢字は同じでもまったく別物で、小麦粉などを水で溶いた生地を薄くクレープのように焼き、揚げパンなどを包んだもの。北京など中国北方地域でよく食べられる軽食で、朝ごはんやおやつとして人気だ。
今回のイベントには、こうした伝統的な煎餅だけでなく、ツナや北京ダックを具材に使ったアレンジ版も見られた。さらにはアボカドペーストを使ったメキシコ風のものや、日本のクレープやお好み焼きまであり、小麦粉生地を使ったさまざまなローカルグルメを集めたお祭りといった趣になっていた。
このフェスティバルは、北京のクラフトビールの作り手である北平機器が主催。今回ですでに4回目となる。北平機器のフードメニューには普段から煎餅など北京らしさあふれるメニューが用意されている。これは、北京で昔から食べられている味を残し、広めていきたいとの思いからだという。このイベントの開催にも、そんな思いがこめられている。
開催初日となった12日午後、会場にはすでに多くの人が詰めかけ、熱気であふれていた。ある出展者に聞いたところによると、12日夜の時点で、2000人が来場したという。会場ではどの店の前にも長蛇の列ができ、さまざまなテイストの煎餅を味わっていた。中でも人気は白毛煎餅王。普段から行列のできる店として有名だが、このフェスティバルでも大変な人気ぶりだった。あまりの売れ行きに、途中で生地がなくなってしまうというアクセントが発生。煎餅を手に入れるまで実に2時間以上かかったという人もいた。
会場には中国人のほか、外国人の姿も多く見られた。北京で暮らす日本人の松嶋さんもその一人。13日に会場を訪れ、人気店の列に並んだ。「煎餅はもともと好物。今回のフェスには、北京の有名店が出店しているのだろうと期待して行ってみました。実際、大変な人混みで、人気店が出店しているのだと実感しました。白毛煎餅王のものを食べましたが、味も香りも大満足でした。ビールに合う味ですね。他のお店も試したかったのですが、お腹が一杯になってしまいました。次の機会に試したいと思います」との感想を寄せた。
会場に並んだ屋台の丸い鉄板の上で、次々に焼かれていくアツアツの煎餅。伝統的な揚げパンだけでなく、ツナやアボカド、北京ダックなど、バラエティー豊かな具材を包み込んだ煎餅に、北京っ子だけでなく外国人も笑顔でかぶりつく。その光景は、美味しいものに国境はなく、ローカルフードがインターナショナルフードになり得ることを証明しているかのようだった。(文/勝又あや子)
「人民網日本語版」2020年9月14日