切れ長で魅惑的な瞳を最大の武器に、繊細な気持ちの揺れも、大胆な感情も伝える俳優・金子大地。ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で演じた“マロ(栗林歌麻呂)”や、『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK総合)の主人公・安藤純にはじまり、昨年は映画『ナミビアの砂漠』で河合優実とガチンコ演技を披露。 2025年の1月クールに放送されたばかりの井之脇海とのW主演ドラマ『晩餐ブルース』(テレ東系)も好評を持って受け入れられた。昨年からはフリーランスとなり、廃油仲間と演劇ユニットを結成するなど、精力的に進む金子さんのTHE CHANGEを聞く。【第1回/全4回】 取材ビルの1Fでエレベーターの到着を待っていると、スッと現れた人物に、とってもフランクに「こんにちは~」と話しかけられた。「こんにちは」と返しながら顔を見てビックリ。これから取材するご本人の金子さんではないか! あまりの自然体っぷりに驚かされたが、その後に改めて始まった屋外での写真撮影で、再度驚くことに。そこには、先ほどのフランクさとは別人の、スクリーンに愛されること必至の“映える”オーラをまとった美しい金子さんが立っていた。 ──昨年、デビュー10周年でした。さまざまな人から影響を受けてきていると思いますが、同世代の中で特に大きな刺激を受けた俳優さんはいますか? 「同世代と言っていいのかは分かりませんけど、林遣都さんの芝居がすごく好きです。お芝居の姿勢というか。人に対する思いやりみたいなもの、愛情がめちゃくちゃ強い人だからこそ、ずっと芝居のことを考えられるんだろうなと思います。若手世代の役者さんの中からなら、林遣都さんが僕はナンバーワンだと思っています」 社会現象を起こした『おっさんずラブ』に出演したことが転機に──それは『おっさんずラブ』(テレビ朝日系・2018)での共演があったからですか? ※『おっさんずラブ』・・・2016年の単発放送を経て、2018年に田中圭、林遣都、吉田鋼太郎をメインに連ドラとしてスタートし、放送中および放送後もSNSを中心に大きな盛り上がりを見せてブームを巻き起こした作品。映画版、シーズン2、シーズン3と製作された。敬称略 「その前の『火花』(Netflilx・2016)を見て、当時、遣都さんは24歳とか25歳とかだったと思うんですけど、それであの作品にチャレンジしていて、本当にすごい役者さんだなと思いました。自分が同じ歳のときに出来るのかと言われたら絶対にできないなと。遣都さんの『火花』を見て、本当に感動しました」 ※『火花』・・・又吉直樹の芥川賞受賞作を、廣木隆一を総合監督に連続ドラマ化。林遣都と波岡一喜が主演を務めた。敬称略 「だから、『おっさんずラブ』で共演する前から遣都さんのことは役者として尊敬していて、そのあとで『おっさんずラブ』での共演が決まったんです」 ──そのことはご本人には。 「伝えましたよ。僕が『火花』をべた褒(ほ)めしているのは記事にもなっていますし、直接お話したときにも、すごく喜んでくれました」 ──林さんも、俳優としてとてもストイックなイメージです。 「ストイックですね。でも刺激を受けた役者さんは、ほかにもたくさんいますよ」 いまでも、“マロ”の愛称で呼ばれることも──『おっさんずラブ』があれだけの社会的なムーブメントを起こしたのは、どう受けとめていましたか? 「あんな風になるとは思っていなかったです」 ──SNSでファンが作品を盛り上げていく形を作った第一弾といっていい作品ですよね。まさに先駆け。 「そうですよね。ゴールデンタイムではないドラマで、ここまで話題になるとは思っていませんでした。僕のことも、間違いなく『おっさんずラブ』で知ってくれた人が多かったと思います」 ──金子さんが演じたマロも、本当に愛されて。最初は変わった子だなと思ったんですけど(笑)、どんどん愛着がわいていきました。今でもマロは愛され続けています。 「いまだに、マロって呼んでくれますからね」 ──『おっさんずラブ』のファンは、いまも出演者のみなさんを、例えば「次はマロがこの作品に出る! 見なきゃ!」と推し続けています。「マロの新作だ」と推されることも嬉しいですか? 「嬉しいですよ。間違いなく、僕のターニングポイントといっていい作品です」 「結果が出なかったら役者を辞める」懸けて挑んだ作品で、また別の世界が見えてきた──翌年には主演ドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK総合)が放送されました。こちらも見ていましたが、素晴らしかったです。まさに金子さんの魅力を生かした役でした。 ※『腐女子、うっかりゲイに告る。』・・・浅原ナオトさんの長編青春小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」のドラマ化作品。月間ギャラクシー賞および、2019年度のテレビ部門奨励賞を受賞。金子さん自身も、第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞で新人賞を受賞した。 「がむしゃらに挑みました。そこまでの全部を詰めてやる! みたいな気持ちがあったと思います。21歳くらいまで本当に、ほとんどオーディションに受からなくて、マネージャーさんにも“23歳までに結果が出なかったら北海道に帰ります”と言ってました。“これでちゃんとやらないと!”と思って臨んだ作品でした」 ──結果、とても高い評価を受けました。 「嬉しかったですけど、それよりも実際のLGBTQの当事者の方から手紙をいただいたりしたことが嬉しかったです。評価されて“いえーい!”とかってことより、ちゃんとその人たちに届いたという喜びを初めて実感できたというか。こうした、いい作品に出続けたいと思うきっかけになりました」 高校卒業から上京し、最初はオーディションに落ちまくっていたという金子さん。最初に大きな評価を得た『腐女子、うっかりゲイに告る。』で、賞に輝いたことよりも、手紙をもらったことの嬉しさを心に留めているところに、金子さんの俳優としての感性を感じる。 かねこ・だいち 1996年9月26生まれ、北海道出身。「アミューズオーディションフェス2014」にて俳優・モデル部門を受賞しデビュー。以降、映画・ドラマ・CMに多数出演し、2018年の、ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)への出演で、ドラマ自体の人気とともに、自身の人気にも火がつく。翌年にはNHKのドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK総合)で初主演を果たし、同作品で第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞・新人賞を受賞し、高い評価を得た。主な出演作に映画『殺さない彼と死なない彼女』(2019)『猿楽町で会いましょう』(2021)『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(2021)『サマーフィルムにのって』(2021)ROMAN PORNO NOWW『手』(2022)『ナミビアの砂漠』(2024)などがある。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』『育休刑事』(NHK)『晩餐ブルース』(2025)など。 |
金子大地「23歳で結果出なければ帰郷」
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