樋口久子IDC大塚家具レディース最終日は30日、埼玉県武蔵丘GC(6535ヤード、パー72)で行われ、宮里藍(20)が67で通算14アンダーまで伸ばし、2位に7打差をつけて圧勝した。昨季に並ぶ今季5勝目で、ツアー通算11勝目。今季3度目の完全優勝。賞金ランキングは3週ぶりに不動裕理(29)を抜いてトップに浮上した。今週は国内唯一の米ツアー公式戦「ミズノクラシック」(11月4~6日、滋賀県大津市・瀬田GC)で女王アニカ・ソレンスタム(35=スウェーデン)を迎え撃つ。また大物新人、諸見里しのぶ(19)は通算7アンダーで自己最高位の2位に入り、来季の賞金シードを確実にした。
最終18番、ピン右2・5メートルからのバーディーパットが外れると、9290人の大観衆の大きなため息の中で、宮里は苦笑いを浮かべた。「最後は入れたかった。スコアはいくつでもチャンスは決めなければいけない」。自身の最多ストローク差優勝記録には1打届かなかった。それでも7打差の圧勝だ。最後まで自分自身との戦いを楽しむ余裕の勝利だった。
2位に4打差をつけて迎えた最終日は、どこまでスコアを伸ばせるか自分自身の限界へのチャレンジだった。「スコアボードは見なかった」と言う。序盤はバーディーを取れずに苦しんだが、8番で流れを変えた。162ヤードのパー3。「ちょっと右を向いていたかなと思って、気持ち左めに向いた」。6Iで放った第1打はカップのわずか右をすり抜けて奥1・5メートルにつけた。きちんと試合途中で修正して、1つ目のバーディーを奪うと流れに乗った。後半は4つのバーディーを重ねた。
大会4日前の24日、兄妹3人で、交流のあった、同じ名前の女性シンガー「AI」のコンサートに行った。人生初のライブの感動は大きかった。「身長は私と変わらないのに、舞台に立つと大きく見える。2時間半、声は枯れることなく、どんどん大きくなる」。この日、スコアをどんどん伸ばし、ギャラリーを引き込んでいく宮里の姿はステージの上の「AI」と同じだった。
最終18番こそ課題を残したが、目標通りのバーディーラッシュで通算14アンダー。「最近は最終日に伸ばせない試合が続いたので、きょうはいい内容だった」と今季の最大の目標とする11月末の米ツアー最終予選会へ向けて大きな収穫となった。
賞金ランキングでは今大会を欠場した不動を抜いて再びトップに立った。「残り試合宮里は4戦中3戦に出場)も少ないし、きん差(約555万円)なんで、油断はできない」と最年少賞金女王がいよいよ現実的に視野に入ってきた。今週はミズノクラシック。日本の賞金ランク1位として自信を持って、米ツアー5年連続賞金女王を決めたソレンスタムを迎えられる。
「ビッグスコアじゃないと優勝のチャンスはない。今持っているものを全部出し切りたい」
ビッグスコアを出せば尊敬する女王にも勝てる。そう宮里は信じている。