谷垣禎一財務相は27日午前、自民党谷垣派の臨時総会で、9月の党総裁選への立候補を正式に表明する。午後に党本部で記者会見して、アジア外交の立て直しなどを柱とする政権構想の概要を発表し、消費税率の5%引き上げや、首相に就任した場合に靖国神社に参拝しないことなどを訴える。一方、「ポスト小泉」最有力候補の安倍晋三官房長官は、政府の「再チャレンジ支援策」推進のため同日午後から岩手県を皮切りに全国行脚を開始。9月8日告示、同20日投票に向けて、総裁選の選挙戦が事実上、スタートした。
出馬表明に先立ち谷垣氏は27日朝、フジテレビの番組に出演し、消費税率引き上げについて「2010年代半ばまでのできるだけ早い時期に5%上乗せして、10%くらいのことは覚悟しておかないといけない」と初めて具体的な引き上げ幅を示した。
また「世論調査をみると安倍さんが断トツなのは間違いないが、総裁選で5年間の小泉政治の何を引き継ぎ、何を新しくしていくかを議論しなくてはいけない」と決意を語り、靖国神社参拝については「総裁になったら控えたい」と首相としての参拝自粛を明言した。
この後、首相官邸に小泉純一郎首相を訪ねて、出馬表明することを伝えた。
午後に公表する政権構想の概要では、国民と国家が信頼関係で結ばれる「絆(きずな)」の構築を基本的理念とし、アジア外交の立て直し▽財政再建▽地方活性化--を重点公約に掲げる。
福田康夫元官房長官の不出馬表明で安倍氏の総裁選出が有力視されるが、谷垣氏は内政・外交両面で「小泉路線」を継承する安倍氏との違いを鮮明にし、福田氏支持層を取り込みたい考えだ。各候補が出そろった後に、改めて政権構想の全容を明らかにする方針だ。
谷垣派の所属議員数は谷垣氏本人を含めて15人で、立候補に必要な20人の推薦人確保が最優先課題となっている。確保できた場合にも派閥の枠を超えた支持獲得が必要となり、多数派工作に不安を抱えたままの船出となる。
谷垣氏の出馬表明について、安倍氏は同日午前の記者会見で「多くの方々が『谷垣さんを』と望んでいる中で、立候補は当人のためにもいいのではないか」と歓迎した。安倍氏は同日午後、岩手県八幡平市を訪れて農業経営者らと意見交換し、格差を固定化しない再チャレンジ可能な社会づくりをアピールする。安倍氏は8月下旬、麻生太郎外相は同月20日前後にそれぞれ立候補を正式表明する予定。河野太郎副法相や鳩山邦夫元労相も立候補への意欲を示している。【平元英治】
毎日新聞 2006年7月27日