埼玉県ふじみ野市の市営プールで、同県所沢市立小手指小2年、戸丸瑛梨香ちゃん(7)が吸水口に吸い込まれ死亡した事故で、監視員の中には泳げない人や水着を着ていない人もいたことが3日、複数の元監視員の証言で分かった。講習会や業務マニュアルもなかったという。今回の事故でも、監視員は吸水口のふたについて認識していなかった。県警捜査1課と東入間署は、ふじみ野市や管理会社の安全管理について詳しく調べている。
このプールは、管理者のふじみ野市が「太陽管財」=さいたま市北区=にプール管理を委託。同社はさらに「京明プランニング」=同市見沼区=に孫請けさせていた。
元監視員の男性(25)と女性(18)は、講習会などの受講歴は問われず「業務マニュアルは見たことがない」と話す。ところが、市が太陽管財に出した業務仕様書では、監視員は日本赤十字社や日本水泳連盟などの講習会の修了者などを配置することになっていた。
男性は、高校3年の時にチラシを見て応募した。面接担当者は当時の現場責任者で、京明プランニングの佐藤昇社長(48)だった。心肺蘇生の資格や講習会の受講歴などは聞かれず、「大学生と偽り、後で高校生とばれたけど(佐藤社長に)『かまわない』と言われた」という。危機管理や業務に関するマニュアルは「見たことも聞いたこともない」と話す。
監視員の仕事は危険な飛び込みを禁止したり、スライダーを逆に滑る客に注意することだった。「吸水口より水が噴き出す排水口の方が危ないと思ったので、近づかないよう指示していた」といい、「友達に誘われて監視員になった高校生の中には、泳げない子や水着を着ていない子もいた。こわごわ水の中を歩く監視員もいた」と話した。
また、3年間アルバイトをしていた女性は、面接では水泳の技能については一切聞かれず、仕事のやり方も「友達から聞いた。会社から説明はなかった」という。講習会もなく「『何かあったら現場責任者に連絡して指示を待て』としか言われなかった」と話した。【浅野翔太郎、小泉大士】
毎日新聞 2006年8月4日