奈良女子大(奈良市)の倉庫で見つかった明治時代のグランドピアノが、解体修理の結果、現存する最古の国産グランドピアノだった可能性が出てきた。現存最古とされている東京都港区教委所蔵のグランドピアノより古い形式を示す特徴があった。脚部や前面、譜面台を彫刻で飾り、鋳鉄のフレームには専門家が「国産では見たことがない」と驚く見事な透かし彫りが施されており、同大は「現代の技術でよみがえらせ、活用したい」としている。
備品購入記録から、同大創立当初の1909(明治42)年に購入したものといい、02年に明治の洋風建築で知られる同大記念館(重文)裏のプレハブ倉庫に眠っているのが見つかった。
同大の依頼でピアノ修復の第一人者、松永栄二さん(82)=京都市=が解体し、響板の「日本樂器製造株式會社・山葉鑒(かん)製」という銘票や、フレーム下の部材にある社名のゴム印を発見。港区教委所蔵の旧氷川小学校のヤマハ製グランドピアノ(1907年ごろ)を比較のため鑑定し、奈良女子大のピアノには▽ペダルの接続部が棚板と鍵盤の間に入っている▽弦を支えるコマの切り込みが現在の約5倍の約10ミリある--ことが分かった。
現在のピアノにはない特徴があり、ヤマハが良質な部品を輸入して試作した極初期の国産ピアノの可能性が高いという。【沢木政輝】
毎日新聞 2005年9月17日 東京夕刊