ライトアップされた紅葉と五重塔=長谷寺のインスタグラムから
満開の桜、国内最大級の掛け軸の開眼法要……。奈良県桜井市の長谷寺(はせでら)が四季折々の風景をインスタグラム(@hase_dera)で公開したところ、フォロワー数が1万人を超えた。撮影から編集まですべてを担当する寺の僧侶、瀧口光記さん(36)は「人々と観音様をつなぐメッセンジャーでありたい」と話している。
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長谷寺は真言宗豊山派の総本山で、西国三十三所観音霊場の札所。東大寺などがある奈良市中心部から遠いこともあり、かつて年間50万人以上だった参拝者数は減少傾向が続いていた。
しかし、瀧口さんは「奥まった場所にある分、ほかの寺院にはない魅力があります。すごく絵になるんです」と話す。季節の花々が咲き誇り、「森にお堂が生えている」と言われるほど豊かな緑に恵まれている。399段の屋根付きの石段「登廊(のぼりろう)」は圧巻だ。
瀧口さんは大学時代からSNS「ミクシィ」に親しみ、趣味で写真を撮ってきた。24歳で長谷寺の僧侶となり、3年前から広報を担当。ホームページを改良するなどした。
インスタグラムは2年前の5月に開設。写真の腕を磨き、コメントにはこまめに返信した。自分で動画撮影用の超広角カメラを用意し、「インスタ映え」する境内の魅力を発信している。
撮影や投稿を広告制作会社に委託し、フォロワーが16万人以上という寺もあるが、長谷寺は瀧口さんがたった1人で手がけ、1万人を獲得した。閲覧した人は「夢の様に美しい、昔話の世界の様です」「もう八重桜の季節なんですね」などと多くのコメントを寄せている。
伊東聖隆(しょうりゅう)教務執事(57)は「私たちの世代と若い人たちをつなぐキーパーソン」と評価し、瀧口さんも僧侶としての自分の役割だと考えている。(宮崎亮)