日本公開の韓国映画として最高の23億円の興行収入を記録したペ・ヨンジュン主演の「四月の雪」。映画だけでなく、ポップス界でも女性歌手BoAが人気を集める。日本をはじめアジア展開に力を入れる韓国芸能界の最前線を探った。【ソウル堀山明子】
「すみません。まだ日本語が下手なんですけど」。BoAを世に出した大手芸能プロダクション「SMエンターテイメント」の一室で取材に応じた呉知ミン(オジミン)さん(17)=高校2年生=は、覚えたての日本語を話した後、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
広末涼子さんに少し似た清楚(せいそ)なイメージで、長い黒髪が印象的な美少女だ。99年から歌と踊りの訓練を受け、最近は日本語を週2回、中国語を週1回、それぞれ数時間程度勉強している。早ければ年内にも日本でデビューさせる計画だ。なぜ韓国より先に日本デビューなのか?
「日韓どちらでデビューさせるかは、その子の個性次第。彼女は日本人的な洗練された雰囲気があるので、日本で先に出してからのほうが韓国で受け入れられる。日韓で売れれば、中国のファンはついてくる」。姜(カン)ジョンア・新人開発室長が語った戦略だ。中国でデビューした例はまだないが、女性4人組「天上智喜」は韓国デビューの直後に中国にも進出し、中国でのヒットが韓国の人気上昇につながった。
かつてチョー・ヨンピルが韓国人気の延長でアジア進出した従来パターンを破り、デビューと同時にアジア地域で多角的に活動を展開する。
中堅の芸能プロダクション「スター帝国」もアジア進出を意識し、新人歌手にはデビュー1年前から日本語を必須科目にしている。女性4人組「JEWELRY」は、日本の歌番組にも積極的に出演し、昨年6月にはオリコンチャート18位に入った。ニュースはすぐに韓国に報道され、「BoA以来のヒット」と注目された。李柱元(イジュウォン)企画広報室長は、「日本進出は収益にはあまりならないが、日本で知名度を高めれば、韓国、中国で売り出す時のイメージアップに役立つ」と日本進出の波及効果を強調する。
年に20~30回のオーディションを受けるという鄭文盛(チョンムンソン)さん(20)は、昨年11月から週1回、日本語の個人レッスンを受け始めた。オーディションで語学力が重視される傾向をかぎとったからだ。「歌・踊りがうまいのはたくさんいる。プラス、日本語ができれば一歩優位に立てる」と話す。
一方で、韓国デビューを目指す日本人も生まれている。トモミさん(22)は今年5月、スター帝国のオーディションに合格し、現在、韓国語の特訓中だ。「韓国芸能界のほうが刺激的で熱い。目標を大きく持てる」という。事務所側は韓国デビューの後、日本進出も考えており、韓国発の日本人歌手がアジアで活躍する日が来るかもしれない。