【ロッテ3-2阪神】ベンチを勢いよく飛び出した。チームの全打点をたたき出したヒーローは、歓喜の輪の中心に飛び込んだ。甲子園の夜空に両手を突き上げ、その身をゆだねた。チームを4連勝へ導いたのは、李スンヨプの研ぎ澄まされた“勝負強さ”だった。
甲子園が悲鳴を上げたのは2回だ。2死二塁の先制機で打席が回ってきた。すべて変化球でカウント1-3。狙いを変化球に絞った。内角スライダーをパーフェクトのタイミングで強振。誰もが打った瞬間にそれと確信した先制2ランは、虎党で埋まった右翼席中段に突き刺さった。
「去年までなら、あそこで直球を待っていたけど、絶対に変化球がくると思ってた。日本の野球に慣れた証拠だね」
己のスタイルに信念を持って臨んだ来日1年目の昨季は14本塁打。打席での柔軟性を意識した今季は30本塁打をマークした。4回には適時二塁打で貴重な追加点を挙げるなど4安打3打点。6回には左中間を破る一打で三塁を狙って憤死したが、これが三塁打ならサイクル安打となる猛打で存在を輝かせた。
圧倒的な強さでの日本一。出場権を得たアジアシリーズには、アジア記録の56本塁打を記録した03年まで在籍した韓国のサムスンが出場する。千葉マリンでのシリーズ第2戦の後、偵察に訪れた古巣のスコアラーと会食した際には、決戦の地である東京ドームでの再会を誓った。シリーズでスタメン出場した3試合で3本塁打を量産し、その約束を果たした。
韓国人として、ロッテの一員としての誇りがある。「古巣との対戦でも試合である限り勝ちにいく。韓国のファンに成長した姿を見せたい」。次のステージはアジアNo.1を決める大舞台。そこでの役目は十分に分かっている。アジアの大砲に休息はない。
≪11月10日からはアジアシリーズに≫日本、韓国、台湾、中国の優勝チームが参加する初のアジアNo・1決定戦「KONAMI CUPアジアシリーズ2005」は11月10日から東京ドームで行われる。日本シリーズを制したロッテと韓国のサムスン、中国リーグの選抜チームの出場が決定。台湾からは29日の台湾シリーズで対決する誠泰-興農の勝者が出場する。試合形式は4チーム総当たりでリーグ戦を行い、上位2チームが決勝に進出。2チーム以上が同率で並んだ場合、(1)当該チーム同士の勝敗(2)総失点の少ないチーム(3)総得点の多いチーム--などの順に順位を決定する。全試合DH制を採用。優勝チームには賞金5000万円、準優勝チームには3000万円が贈られる。