サッカーのスペイン1部リーグで、クラブ創設107年の伝統を誇るビルバオが最下位にあえいでいる。スペイン人選手だけの主義をかたくなに守り、民族、自治独立意識の強いバスクのシンボルともいわれるチームは、開幕戦での勝利以来、勝ち星がないまま1勝3分け6敗と出遅れた。
リーグは8度制覇、国王杯は23度の王座に就き、バルセロナ、レアル・マドリードと並んで1928年のリーグ創設から2部降格がない古豪だ。バルセロナやRマドリードが潤沢な資金で外国人選手を獲得してきたのと対照的に、フランコ独裁時代の抑圧、弾圧に抵抗したバスク人の誇りから外国人選手に頼らない姿勢を貫いてきた。
70年代後半からほかのクラブに先駆けて、ユース年代の充実した育成システムを取り入れた。下部組織から有能な選手を育て上げ、82-83、83-84年シーズンにリーグ2連覇を達成。GKスビサレッタやJリーグでもプレーしたFWサリナスらスペイン代表で活躍した選手も輩出した。
しかし以降は頂点に立てていない。95年に欧州連合(EU)内の選手移籍自由を認めた「ボスマン判決」の影響が見逃せない。かつてはクラブに結束を誓った選手が国内外のビッグクラブに移籍。今季の前もバルセロナにFWエスケロ、チェルシー(イングランド)にDFデルオルノが移るなど実力派が次々とバスクを離れた。
弁護士出身のラミキス会長は「苦境にあってもクラブの誇りを守り続けたい。選手が結束して必ず立ち直る」と話す。10月31日、新監督として80年代にリーグ2連覇にチームを導いた元スペイン代表監督のクレメンテ氏の復帰が決まった。(共同)