安倍晋三官房長官は、9月の自民党総裁選で公表する政権構想の策定を本格化する。原案となる近著「美しい国へ」では、憲法改正や格差社会の是正に比重を置くと同時に、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を改めて擁護した。不出馬を表明した福田康夫元官房長官の主張する政策をどこまで反映させるかという課題も含め、今後の肉付けが焦点となる。
安倍氏の近著は、政権公約の基礎となるもの。側近議員や有識者らはすでに外交、経済、教育などの分野で安倍氏にそれぞれ提言しており、安倍氏はそれらを集約し、来月下旬の出馬表明時に公表するとみられる。靖国参拝や対中関係などに関し、安倍氏の政策に否定的だった福田氏が不出馬となり、側近議員は「福田氏に近い政策を安倍氏がどの程度自分の公約に盛り込むかがポイントになる」と語った。
近著では、現行憲法について「わが国の安全保障と憲法のかい離を解釈でしのぐのは、もはや限界がある」と指摘、9条改憲志向を明確にしている。21日の講演で教育基本法改正とともに「我々の世代でこうした課題をしっかり達成したい」と強調しており、憲法改正への積極的取り組みを重要課題として盛り込むとみられる。
昭和天皇がA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を表明していたことで改めて注目される靖国神社に関しては、「一国の指導者がその国のために殉じた人々に対し、尊崇の念を表するのはどこの国でも行う行為だ」と首相参拝を改めて肯定した。ただ、首相になった際に自身が参拝するかについては記述しておらず、構想にどう記すかがポイントとなる。対中関係については日中間で政治問題と経済問題とを切り離す「政経分離の原則」を唱えた。
小泉改革に伴う所得などの格差問題では、「再チャレンジ可能な社会」を提唱。セーフティーネット策を重視することで、小泉路線との違いを強調している。【中西拓司】
毎日新聞 2006年7月22日 18時50分 (最終更新時間 7月22日 21時09分)