【ローマ海保真人】イタリアサッカー界の不正疑惑事件を巡る控訴審は26日、3クラブの2部リーグ(セリエB)降格処分を決めた1審裁定を見直し、ユベントスだけを2部降格とする裁定を下した。“甘い裁定”の背景には、新シーズンの1部リーグ(セリエA)開催に伴う混乱を避けようとした政治的判断があるとみられる。降格を免れた各クラブ関係者はひとまず胸をなで下ろしている。
同裁判所側は、1審より軽減化された裁定の理由を「8月10日に発表する」と語り、詳細を明らかにしていない。
伊各紙によると、4クラブは控訴審で処分が軽減されない場合、上告し地方裁判所などの上級審で争う構えを見せていた。上級審が延々と続けば、新シーズンのリーグ開幕がずれ込み、混乱をきたすことが懸念された。
14日の1審裁定については、サッカー界やファンのみならず政界の一部からも「厳し過ぎる」との声が上がっていた。処分を受けたクラブの株価急落、スポンサーやテレビ放映権料の問題などの経済的な悪影響も危惧(きぐ)された。
セリエA残留を言い渡されたラツィオのロンゴ弁護士は伊メディアに「裁定はクラブ全体の犯罪という見方を改め、一部経営陣に責任を負わせた」と話し、残留に満足感を示した。1審ではく奪された欧州チャンピオンズリーグ(CL)の出場権を取り戻したACミランの熱烈なファン、マロニ前労働・社会政策相は「CLに出られることは勝利に近い」と語った。
だが、裁定は同時にユベントスに対し重点的に不正疑惑の責任を押し付けた形でもある。ユベントスのコボリジリ会長は「裁定は不公平であり、全く受け入れがたい」と話し、イタリア・オリンピック委員会に上告し、さらに不服の場合、一般裁判所へ訴える方針を明らかにした。
また、フィオレンティナのデラバッレ・オーナーはセリエA残留だけでは満足せず、「名誉とCL出場権を取り戻すために戦い続ける」と語るなど、余波はおさまりそうにない雲行きだ。
毎日新聞 2006年7月26日 12時02分